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福祉のこころ(20)

精神科看護師 上原 利恵

利用者様から学ぶこと

精神科デイケアは、外来で通院している患者さんが社会復帰するために利用する施設で、朝9時から15時まで開かれており、日中の居場所として利用されたり、作業所へ行く準備として通ったり、仕事に復帰するために来られたりするところです。

私は、精神科看護師としてそこに勤務して10数年が経ちます。その間に通っておられた利用者様のことをご紹介したいと思います。

Aさんは、うつ病になる以前は営業をバリバリこなしていた方です。発症は、当院に来られる5年前で、体調が悪くなり内科に行っても特に悪いところは見つからず、メンタル・クリニックを紹介されたそうです。

電車にも乗れなくなってしまい自宅に引きこもり、会社は休職扱いとなりました。メンタル・クリニックに暫く通院したのち、当院に来られました。家族のためにも会社に復帰したいという思いはあるのですが、不安が襲い、自信がでてきません。電車に乗ることができないので、いつも妻の車で送り迎えされ、精神科デイケアに週2回から通い始め、徐々に日数を増やし、やがて毎日、通所できるようになりました。

そして、本格的に会社に行くために、背広を着て通うようなことから始めたのです。また、この頃から主治医と会社の支援担当者は、会社に復帰するために、Aさんとの面談を始めました。それから数か月後に、Aさんは、短い時間から勤務を開始し、少しずつ勤務時間を延ばしていき、会社へ復帰することができました。その後の通院は、半年に1回となり、薬も飲む必要がなくなり、最後にお会いしたときには、顔が笑みで輝き、喜びの表情にあふれていました。

Bさんは、地方から大都市に出て来た公務員の方です。転勤は、本人の希望だったそうですが、職場の雰囲気が、本人にとって、気さくに誰にでも話しかけられるような環境ではなく、思うようにコミュニケーションが取れない状態だったとのことです。それと、息子さんのことで悩んでいたことがストレスとなり、うつ病の原因と考えられています。職場の近くまで行くのですが仕事場に入れず、そのうち電車にも乗れない状態となったそうです。

この方も当院受診後、精神科デイケアに通所することになりました。参加できる回数は、週2〜3回からの開始です。通院の送り迎えは、やはり毎回、妻の車です。徐々に回数が増えてくると、自分で電車やバスを利用することができるようになりました。しかし、職場へは、まだ行けない状態です。職場への復帰を考えるのですが、1年が過ぎていきました。

何度か主治医と職場の担当者との面談が行われた結果、以前いた地方の職場に復帰したいという本人の意思、希望がはっきりとみえてきました。やがて、元の職場に戻ることができました。

後日、Bさんから、手紙を頂きました。そこには、今の職場で通常の仕事ができていることや、息子さんの問題も解決の方向に向かい、悩みも解消し、戻ってきて良かったことがつづられてありました。

この、2人の利用者様を通じて感じたのは、家族の支え、妻の支えがいかに大きかったかということでした。今の時代、精神科疾患を患うと、離婚したり、家族が離れ離れになったりして、単身で暮らしている人も少なくありません。大変な環境の中にあっても、絶対に良くなると信じて、寄り添うことがいかに大切かを教えてもらいました。私自身、家族とは何か、妻として家族をどう支えていくべきかを考えさせられる、良い機会が与えられたのでした。