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ハングルはこんなに面白い! 〔6〕

筑波大学名誉教授 高橋 磐郎

最高の言語文字の可能性  〔6〕

二編 日本語をハングル表記したら

(1)50音のハングル表記

日本語の音声は仮名文字で表記され、アイウエオ、カキクケコ…のいわゆる50音が使われるわけです(ここでは説明の為の仮名は片仮名を使うことにしました)。これは母音と子音とを分けた記号を持つハングルを使えば、きわめて効率的に表記できます。韓国ではすでに国立国語学院で日本語の仮名を表記するハングル文字が決められていて、表にされています。

日本の仮名をハングル化したいならこの国語学院の表をそのまま使えばいいのではないかとも考えられますが、ただ幾つかの点で筆者には承認しえないこともあり、これを改善しようとしてみたところ、仮名50音の構造そのものの中に、いままで気付かなかった面白い特徴が発見されたのです。この特徴は仮名のハングル化ということなしには気付かされなかったに違いありません。そしてこれは日本の仮名の構造の本質を表現するものと思われるのです。

まず母音に相当するㅏ、ㅣ、ㅜ、ㅔ、ㅗ、と子音に相当するㅋ、ㅅ、ㅌ、ㄴ、ㅎ、ㅁ、ㄹ、で主な仮名が表記できます(表参照)。ここで表の横の並びを「行」縦の並びつまり列を「段」と呼ぶことにします。表は8行5段なります。

表1 表2

ここで”チ””ツ”に対応するところを空欄にしたのは、タ行の発音が変則で”チ”は티ではなく치が発音としてはもっと近いし、また”ツ”は투では駄目で、ハングルでは表すすべがないからです。

もともと韓国には”ツ”に相当する発音がないので、”ツ”を추や쓰で表すことが多く、韓国の人が話すと”ちゅ”となります。筑波は、”ちゅくば”となってなんともいただけません。

そこで筆者は”ツ”を表記する子音記号を新しく導入するのがよいと思います。たとえば<という記号で”ツ”を●(<の下にㅜ)と書くことにすると、タ行のハングルは
타 치 ●(<の下にㅜ) 테 토 …①
となり発音上無理のない表記となります。

表にないものとしてヤ、ユ、ヨ、ワ、ヲ、ンがありますが、これらについては後で詳しく述べます。また濁点、半濁点、チャ、チュなどの拗音がありますが、これらは本体の右上や右下に小さく添え字を入れて表記するわけです。

こうした細工は文字構造上のバランスを欠き、印刷技術などが複雑になって効率が悪く昔から大きな負担を負ってきたと言わざるをえません。コンピュータ時代になってからも、文字情報処理のソフトやプリンターなどに大きなコストをかけているはずです。さらに日本語を学ぼうとする外国人にも不自然な印象を与え、毛嫌いされる可能性もあります。しかしハングル表記をすればこれらの添え字は一切いらなくなりスッキリします。

(2)濁点問題

まず濁点問題は、表における行の頭の子音としてのハングル文字をどう選べばよいかで解決されます。ガ、バ、パ行の頭子音としてはㅋ(カ)、ㅎ(ハ)の代わりにㄱ、ㅂ、ㅍ、を選べば次のようになります。

가(ガ)、기(ギ)、구(グ)、게(ゲ)、고(ゴ)

바(バ)、비(ビ)、부(ブ)、베(べ)、보(ボ) …②

파(パ)、피(ピ)、푸(プ)、페(ぺ)、포(ポ)

つぎに”ダ”行は①で、ㅌはㄷに、ㅊはㅈとすればよいでしょう。新入りの<の濁点として⊿を導入して
다(ダ)、지(ヂ)、●(⊿の下にㅜ)(ヅ)、데(デ)、도(ド) …③
となります。さらに新入りの⊿は”ザ”行の子音とみなすことが出来ます。ザ行は●(⊿の右にㅏ)(ザ)、●(⊿の右にㅣ)(ジ)、●(⊿の下にㅜ)(ズ)、●(⊿の右にㅔ)(ゼ)、●(⊿の下にㅗ)(ゾ) …④
となり、ズ、ヅは同音とみなせるので③、④は辻褄があいます。

(注)国立国語学院の表では濁点の問題は語中、語頭で分けてあるのですが、ネイティブの人に聞くと、濁点の有無はかなり曖昧なようです。ここで述べたように가=ガ、카=カなどと割り切ることは出来ないかもしれませんが、日本語のハングル表記を日本人が使う場合は、このようにするのだ、と決めてもいいのではないかと思う次第です。