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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

ノーベル賞候補に挙がる日本の研究者は層が厚く、この先も希望が大きく膨らむ

これほど業績の内容が一般人にも分かりやすい受賞は、そうはないのではないかと思った。東京スカイツリーの照明、信号機や携帯電話などで使われ、蛍光灯に代わる「第4世代の光」の礎となった青色の発光ダイオードを発明、実用化した3人の日本人研究者が、今年のノーベル物理学賞に輝いた。栄誉を心から称賛し、日本中が新世代の光でパッと明るく湧き上がるのをともに喜びたい。3人の受賞者は名城大学の赤崎勇、名古屋大学の天野浩、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校・中村修二の各教授である。

これで、日本のノーベル賞受賞者は22人となるが、このうち自然科学分野が19人である。日本の研究者の豊かな発想、独創性と科学技術の底力を示すものと言えよう。3人のうち、赤崎、中村の両氏は日本人受賞者のいなかった昨年も、名前が挙がっており、受賞候補者の常連だった。

この分野では両氏のほか昨年、有力候補として名前が挙がった研究者(研究実績は略)だけでも、東京農工大・遠藤章特別栄誉教授、東北福祉大・小川誠二特任教授、理化学研究所センター長の竹市雅俊氏、東京工業大・大隈良典特任教授、同・細野秀雄教授、東京大・水島昇教授、同・梶田隆章教授、高エネルギー加速器研究機構長の鈴木厚人氏、東京理科大・藤嶋昭学長、首都大学東京・春田正毅教授ほか何人もが控える。それほど日本は候補者の層は厚く、この先も希望が大きく膨らむ。12月10日の授賞式まで、しばらくは乾杯を続け美酒に酔いたいものである。

さて、政府には注文を。政府は2001年に打ち出した第2期科学技術基本計画で「50年間にノーベル賞受賞者30人程度」を政策目標の1つに掲げた。今回の受賞は研究者の強い信念と頑張りによるところ大だが、それを支援する研究環境の充実が政府の宿題である。科学技術立国を言うのなら、もっと行動で示すべきであろう。

ところで、ノーベル賞はダイナマイトの発明で富を築いたアルフレッド・ノーベルの遺言で、1901年から始まったことはよく知られている。ノーベルには詩や戯曲の創作もした文学者の顔もあり、筆まめだった。18年間の交際の末に裏切った23歳年下のウィーンの恋人は、ノーベルの死後、ノーベルからの手紙218通を遺言執行人に買い取らせたと言う。”ノーベル賞週間”初日の10月6日の読売新聞コラム「編集手帳」で教えられたことで、コラムは「ノーベルが幸福な家庭を築いていたら、巨額の遺産は妻子が受け継いだだろう」「ノーベルの失恋も、後世への大きな贈り物」だと結んでいる。