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ハングルはこんなに面白い! 〔8〕

筑波大学名誉教授 高橋 磐郎

最高の言語文字の可能性  〔8〕

二編 日本語をハングル表記したら

(5)日本における漢字のハングル表記

一編4節(7月号)でお話ししたように、韓国では漢字は音読みだけで、しかも一通りだけですが、日本では音・訓の2通り、しかも音読みだけでも何通りもあるのです。さらに訓読のルールもかなり複雑で曖昧なのです。

少し横道にそれますが、ある帰国子女が”竹千代君”をタケチヨクンと読んで皆に笑われて、「田中君や中村君のときは”君”をクンと読むのに、どうして”竹千代君”のときだけギミと読まねばならないのかさっぱり解らない」と言っていました。このように規則ではなく慣れに頼った読み方が多いのです。

以上の観点から、日本で漢字をハングル化するのは、音読みのときに限り、訓読みの場合は仮名としてハングル化するという方針を取らざるをえないでしょう。音読みなら、元が同じ中国なのだから、日本と韓国でそんなに変わらないのではないかと単純に思うかもしれませんが、そう簡単にはいきません。また漢字の読みを仮名書きして、それを仮名ハングル化の原則でハングル化すればよい、と思うかもしれませんが、これにも問題があります。たとえば
愛(아 이)、大(다 이)、英(에 이)…⑧
などハングル2文字を使うものがかなりあります。

しかし、一編5節で述べたように漢字・ハングル一対一の原則は守らないと、ハングル化の意義が失われます。それでこのような場合は、後の字と前の字を合体して1文字とし
愛([※1])、大([※2])、英([※3])…⑨
のような新しい日本式ハングルを作ればよいと思います。仮名にはㅇや促音の<を除いてパッチムがないし、音読みには3字以上の仮名が使われないことが分かっていますので右記の方式が可能です。⑧は1次元配列、⑨は2次元配列になっています。ここに一編5節(8月号)でみたような漢字の改良としてのハングルの特徴が利用されているのです。

⑧の例は2文字とも左右型(一編2節)のハングルでしたが
教(교 우)、屈(구 [※4])、構(고 우)…⑩
のように共に上下型である場合は、そのまま密着させれば形は⑨と似ているので、1文字とみなすことができます。
教([※5])、屈([※6])、構([※7])

読むとき横に読むか、縦に読むかは子・母音の位置関係で混同することはないでしょう。

また左右型と上下型が混ざっている場合
学(가 쿠)、必(히 [※4])、類(루 이)
などは上下型の方を左右型に直して⑨の方法を取ります。
学([※8])、必([※9])、類([※10])

以上で道具が揃ったので、簡単な例文を書いて見ましょう。

私は学生です。

[※11] 타 시 [※11] [※8] [※12] 테 수

なお最後に参考のため韓国と似た発音の漢字の例を幾つか挙げておきます。
約 束 気 温 地 理 紙 準
약 속 기 운 지 리 지 준 〈韓国式〉
[※13] [※14] 키 옹 치 리 시 즁 〈日本式〉


※1:아と이を上下に組み合わせた文字。 ※2:다と이を上下に組み合わせた文字。 ※3:에と이を上下に組み合わせた文字。 ※4:<の下にᅮの文字。 ※5:교の右に우を組み合わせた文字。 ※6:구の右に<の下にᅮの文字の組み合わせ。 ※7:고の右に우を組み合わせた文字。 ※8:가の下にㅋの右にㅜを組み合わせた文字。 ※9:히の下に<の右にᅮを組み合わせた文字。 ※10:ㄹの右にㅜの文字の下に이を組み合わせた文字。 ※11:우の右にㅏを組み合わせた文字。 ※12:세の下に이を組み合わせた文字。 ※13:야の下にㅋの右にㅜを組み合わせた文字。 ※14:소の右に쿠を組み合わせた文字。