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福祉のこころ(24)

大関 博子

大切な、互いに補い合う心

我が家は4人の子宝に恵まれ、末の子はダウン症候群でした。「神様が我が家に願われる子を与えて下さい」と祈って生まれた子供です。

当時、病院で助産師をしていた私は、育児と仕事の両立は無理と考えましたが、この子のためになればとも思い、障害福祉関係の仕事に夫と共に関わるようになりました。

出産の現場は、生命の神秘を目の当たりにします。同時に、少しでも気を抜いたり誤ったりすれば、人の一生に重篤な損傷を残してしまう事故に繋がります。常に謙虚に、真剣に学び、日々技術を磨かなければなりませんでした。

さて、障害福祉の仕事を15年して分かったことは、障害を持つ方は、妊娠期間に異常があるなか出生しているケースが多いことでした。そして、その子が成人するまでに家庭が崩壊したり、障害のある子を片親では育てられずに、施設に預けたりするケースも多くありました。

また、知的障害や精神障害のある人同士の間に生まれた子供たちの中には、療育不足、貧困、虐待などの生育歴を抱えている人が大勢いました。また、犯罪者で障害を持つ方がいると、その人の受け皿となる家庭生活の場所をみつけることが難しいのでした。

人間は、生まれながらに幸せになる権利を持っており、それは保証されるべきだと誰もが言います。しかし、これらのさまざまな問題をどう解決したらいいのでしょう。

重度の知的障害をもつ私の子供を例に考えてみました。いつも朗らかで嬉しそうにしていますが、自分がやりたいことを言葉で表現したり、一人で外出したりはできません。放っておけば、一日中テレビの前に座り、じっと過ごしています。食事は、美味しくてもそうでなくても、話せないのでなにも言わずに、ただ食べます。

本人に時間というものが分からないので、できないことはその都度、必要に応じて手助けしていく「気づき」が大切です。少しでもできたことがあったら、たくさん誉めて次に繋げること、幸せと思うことを一緒に考えて、共に行動してみること。このような積み重ねの暮らしのなかで、最高の笑顔が見られます。

かつて重度心身障害支援施設で呼吸器を必要とする人と出会いました。開眼したままで、表情の変化が分かりにくいのですが、いつも一緒にいる母親は、「この子は、私たちの笑う空気を感じ取るのよ」と言っていました。その「笑顔の連続」を導き出すことが、「福祉の心」だとすれば、それは決して難しいことではないような気もするのです……。

つまり、人の存在そのものに価値を認めること。人を深く理解する心、愛する心だと思います。一人ひとりの障害特性を理解する心を持つことで、解決の道が見えてきて、その延長上に、人間同士として、障害の有無に関わらず、不足なところを「互いに補い合う関係」が育まれるように思います。

障害の程度も種別もさまざまです。性格も生育歴が影響することが多分にあります。だからこそ一人ひとりに対して丁寧に、真剣に、生まれた環境や、育ちを見ていくことが必要なのでしょう。これからも、反省と感謝の心を大切に、より多くの人の幸せに役に立てるよう働きたいと思っています。