機関誌画像

健康一番 (1)

ジャーナリスト 高嶋 久

楽しくウォーキングを

私が大学生だった昭和40年代に、歌声喫茶で「若者よ」という歌がはやっていました。「若者よ、身体を鍛えておけ、美しい心が、逞しい身体に、からくも支えられる時が、いつかは来る……」という詩を書いたのは、ぬまや・ひろし、本名西沢隆二で、いわゆる反戦詩人です。体が心を支えるというのですから、確かに唯物論だなと、当時はマルクス主義を勉強して感心したのを覚えています。

しかし、60代半ばになる人生を振り返ってみて、体が心を支えてくれたのは本当だったなと思います。日本には古来から、心身一如の思想があります。西洋的な心身二元論ではないのです。

40代から物書きの仕事をするようになって、脳と体の不思議な関係に気がつきました。それまでは健康のためにとジョギングをしていたのですが、体がきつくなったので、ウォーキングに替えたところ、考えていることがまとまりやすくなったのです。そう言えば、ギリシャの哲学者も歩きながら対話したそうで、京都には哲学の道があります。

それからは、いろいろな資料を読み込んでおいて、歩きながら原稿の筋立てを考えるようにしました。健康維持と仕事の効率化の一石二鳥で、今も考えが行き詰まると、努めて歩くようにしています。

ということで、本連載の最初はウォーキング。お金がかからず、誰でも気軽にできます。つくばで科学博覧会があった1985年、仕事の関係で知り合ったスポーツ科学が専門の古藤高良筑波大学教授から、ジョギングもウオーキングもカロリー消費量はそう変わらない、と教えられました。日本のウオーキングブームの火付け役の一人です。

もっとも、先生が提唱しているのは「ラン&ウォーク」で、ジョギングしながら、疲れたらウォーキングに替えたらいいというもの。日本人、とりわけ私のような団塊の世代は、疲れても意地になって走ることがあるのですが、目的は心と体の健康ですから、楽しみながらのラン&ウォークを勧めているのです。

ウォーキングの基本は、背筋を伸ばし、歩幅を大きくすることです。ウォーキングストック(ステッキ)を使うと自然に歩幅が広がります。そして、周りの景色を楽しみ、仲間と一緒なら世間話をしながら歩くといいですね。

家の近くでも、普段は使わない道を歩くと、いろいろ発見があります。花や小鳥など、自然をめでるのも楽しみです。春に山菜が出るころ、妻と一緒に山すそを歩き、イタドリを採って帰りました。もっとも妻とは歩くペースが違い、いつも置いてきぼりにしては叱られたので、たいていは一人か犬と一緒に歩くことにしています。