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親日・国際家庭インタビュー 〔1〕

大岩達夫さん

今や大和撫子のフランス人妻

日仏国旗

フランス人の妻と家庭を持ち30年が過ぎ、その間、日本とフランスの両国での生活を経験しました。幸いにも私と出会う前に妻はボランティア活動で日本に滞在した経験があり、日本人の友人もいたため、日本はまったく未知の異文化ではありませんでした。

フランスは、西洋では個人主義の代表選手のような国というイメージが強いのですが、実はそれは戦後にリベラルな思想がはびこったからで、本来は伝統的なカトリックの価値観にもとづく大家族の家父長制度が主流でした。

カトリックは長らく産児制限を禁止していましたから、子沢山が多く、子供が多いほど神様に祝福されているという考えもありました。妻はフランスの中でも最もカトリック信仰が根付いた西部のブルターニュ地方の出身で、両親共に熱心なカトリック教徒で8人兄弟の3番目に生まれました。

当時は、町のほとんどの人々が教会に通い、子供の多い家庭も多く幼児洗礼を受け、妻は小さい時から教会のミサに通い、聖歌隊で歌うことがごく普通の日常でした。妻の両親は、少し時間ができると近くの教会に祈りに行き、全ては教会を中心に動いていました。

フランスでも家庭再建の動き

しかし、1960年代後半になるとフランスでも学生運動が盛んになり、同時にフェミニズム運動(女性解放運動)も起き、それまで禁止されていた避妊が合法化され、教会として禁止していた離婚も頻繁に起きるようになりました。

そのような中、事実婚や離婚が急増し、結婚形態は多様化し、同時に婚外子が急増しました。そのため人々は教会から離れていくようになり、昨年はとうとう同性婚や同性愛カップルの養子縁組みも合法化されました。

しかし、本来、非常に保守的な結婚観を持つフランスでは今、家庭再建の動きが始まっています。例えば昨年の同性カップルの養子縁組み合法化について、全国で大規模な反対運動が起きました。その時の彼らの主張は「子供には父親と母親が必要!」という内容でした。この反対運動は、英国やベルギーなどの周辺国からも驚きの目で見られたほどです。

ヨーロッパでは不況が長く続き、失業率も10%台で多くの若者は将来に不安を抱いています。そのため「最後に頼れるのは家族だけ」ということもあり、家庭を持ちたいと思う若者が、この数年増える一方という統計もあります。

日本人は人間関係が希薄

妻は幸いリベラルな結婚観も持たず、結婚した相手とは永遠に暮らすというカトリックの価値観を持っていましたので、さまざまな困難も二人で乗り越えてきました。それに、もともとフランスの個人主義を嫌い、家庭重視の日本が大好きでしたので、日本に馴染むことも早く、日本語も早々に喋れるようになりました。

無論、30年経っても理解できないことはあります。例えば日本人の人間関係の希薄さです。フランスであれば親友と言われる関係を築いた人とは、住む場所や国が変わっても関係は継続するのが普通です。事実、妻は中学生時代からの友人と今でも連絡を取り合い、お互いの子供の結婚式にも参加しています。

ところが日本では、ようやくできたと思った友人が引っ越しただけで人間関係が切れてしまうことも多く、親族との関係でさえフランス人より希薄に見えます。また夫婦でもお互いに愛の言葉を口に出して表現せず、会社側も平気で単身赴任を強いる人事を強要している状況にいつも首を傾げています。

子育てでも疑問があるようです。夕方日が沈むまで部活をする子供が、真っ暗な夜道を帰ることを放置していることも理解できない一つです。妻は子供の帰宅が遅いとすぐに心配になり、学校に電話し、警察に電話したことすらあります。フランスでは12歳まで登下校時の保護者同伴は法律で義務化されています。治安の差なのですが、未だに批判的です。

しかし、日本の暮らしには非常に満足しています。皆が礼儀正しく、誠実で正直で、どこでも清潔さが保たれているからです。妻を知る人は「お宅の奥さんは日本人に成りきっていますね」とか「奥さんを見ていると、昔、奥さんのような大和撫子がいたんだなと思います」などとほめられるくらいです。