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親日・国際家庭インタビュー 〔2〕

シュトライト美和子さん

新しい文化を生む国際結婚

日墺国旗

カトリックを国教とするオーストリアではカトリック教会で結婚式を挙げる人がほとんどでしたが、ここ数十年結婚の形が大きく変わりました。

スキャンダル等で信者の数が急減したカトリック教会では、年に一度の献金を捧げない人の結婚式を取り扱わないようにしたことや、他教をバックグラウンドに持つトルコ人等の移民の人口が増えたことにより、市役所に設置された結婚式場で弁護士または、法律上その資格を持った者が司る場で式を挙げる人が多くなっています。服装もウエディングドレスとは限らず自由な正装や伝統的民族衣装等で行う人もいます。参席するのは式を司る者、新郎新婦、2組の証人、親戚、友人などです。結婚式の費用は任意になっており、額が大きいほど新郎新婦の紹介や祝いの言葉が長くなります。また、式では結婚指輪を交換し婚姻届けにサインをして提出するところまで行います。披露宴は好みの会場で行われますが、参席者の数はまちまちです、トルコ人のように伝統的に盛大にする人は100人位、平均的には20〜30人位で食事の後はダンスを心行くまで踊ります。

結婚式の費用は新婦側が持つ

さて、結婚式の形はさることながら、最も大きく変わったことは、結婚に対するコンセプトだと思います。日本とはだいぶ異なるのですが、オーストリアでは昔から結婚式にかかる費用はすべて新婦側が持つことになっており、新郎からの結納金は習慣的にないので女の子を持つ親はお金がかかりました。どうやら結婚は女の人のためとの概念があったようです。昨今では親の関与を受けず、本人同士で経費を分担し合う人が多いようです。そのためか、年々結婚しないで家庭を持つ人たちが増えています。40代においては約50%もの人たちが結婚をせずに一緒に暮らしています。高齢になるほどそのパーセントがグーンと低くなることからみても、ひと昔前までは結婚して家庭を営む人がほとんどだったと言えます。

結婚しなくなった理由は様々であるにしても結婚による束縛がなければ自由に相手を替えることができるわけですから子供にとっては決して幸せなこととは言えません。母子家庭や父子家庭も少なくはないのです。私がオーストリア人の夫と結婚した30年前、このような結婚事情を知って大変なショックを受けました。この国が結婚危機に直面していると、深く心配をしました。しかし、父母にとっても、国家においても子供たちは未来を築く大切な財産ですから、生まれた時から大学4年まで経済的に守られていく仕組みになっています。大学4年までの学費は無料である事以外に一人の子供に支払われる子供手当も毎月3.5万円と高額です。しかし、子供の視点からみたら永遠に変わらない父母がいて、お父さんの名字を継承して、父母の愛によって育まれて立派な大人になり、自分もまた将来そのような結婚をして、幸せな家庭を築きたいと願っているに違いありません。

ハーフではなくダブルの子供たち

夫と30年以上日本で結婚生活をしている私は、国際結婚に対して大きな希望を抱いています。二つの異なった文化習慣が一つになり新しい文化習慣が生まれてくるからです。私たちのように東洋と西洋の文化習慣が家庭の中でぶつかり合うとお互いの良いものだけを吸収して悪いところを排斥しようとする本能が働き、夫から多くの西洋文化を学びました。特に苦手であった積極的に社会活動をする事や、テーブルマナー等には努力を要しました。夫もまた日本の良いところ、儒教や仏教の教えを背景にした行儀や伝統、習慣を学んだようです。しかしまた、善し悪しの判断が往々にして風潮や周囲の人々の反応で変わる体験もしました。夫は日本では妻をほめ過ぎると嫌われ、逆に謙遜であると人々が喜ぶと感じたようで、人の前では失礼な事も言います。夫と出会った頃見せてくれた西洋の良き文化とも言えるレディーファーストは影を潜めています。

風潮が与える影響は意外と大きいもので、近年の結婚事情にも現れているように思います。日本に性解放(フリーセックス等)の風が上陸してきた45年ほど前、授業でスウェーデンから来た性解放の講話を聴いて大変驚いたことを記憶しています。その頃母は、年頃の私に「結婚前にそのような事をしてはだめだよ。欲しいものが手に入ったら結婚どころか捨てられるよ」と言って指導してくれました。それから45年経た昨今の結婚事情は最悪な方向に向かっているように思います。

夫と私はレディーファーストでなくても、少々亭主関白でも私だけを愛し、夫だけを愛し続けて時を経て夫婦の愛が深まりました。夫が居て家族がいることの幸せはこの上もなく安らかで喜びに満ちています。もし夫がいなくて家族がおらず、一人ぼっちで他界するとしたらとても寂しいです。老婆心ではありますが、1日も早く性道徳の良き風潮が見直され、皆が幸せな結婚を目指せるように意識改革をして、この結婚危機を越えていけたらどんなに素晴らしいことでしょうか。

国際家庭の子女たちは両国の架け橋ですから何と言っても希望があります。私たちに授かった3人の子供達は大学入学を機に夫の祖国であるオーストリアの首都ウィーンに在住しています。日本では国際結婚の子供達をハーフと言いますが、「私たちはダブルなのよ!」と言っています。英語を含め両国の言葉、ドイツ語と日本語の3カ国語を流暢に話しますし、二つの文化の良い部分を吸収していますので祖国オーストリアで良き風潮を起こす一員となってくれたらと心から願っています。