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お日さまニコニコ毎日前進![3]

エッセイスト 櫻井ひろみ

「男は仕事、女は家事」に見る男と女、今昔

目標13%。日本政府が本年3月に閣議決定した、男性の育児休業取得率の2020年目標値です。2013年度は2.03%でしたので大幅な数値アップとなりました。もちろん、目的は若い夫婦にたくさんの子供たちを産んで欲しいからに他なりません。日本人口ピラミッドの歪(いびつ)な高齢化、年金システムの崩壊、労働人口の減少、未来国家予算の破綻…と、この数値の背景には政治家の先生方の頭を悩ませる難問が横たわっているのです。

それでは育児休暇を取得したらそんなに子供が増えるのでしょうか? 確かに、そんな数値が出ているのです。厚労省の10年間の調査結果によると、夫の休日の家事・育児時間が6時間を超える夫婦の第2子出産率が67.4%だったのに対して、夫が全く家事・育児をしないケースでは9.9%にとどまっています。人口を維持するために必要な、1人の女性が生涯に産む子供の平均人数の推定値「合計特殊出生率」が「2.07」を必要としている以上、第2子出産は絶対に頑張ってもらわないと困るというところでしょうか。

「イクメン」という言葉がいつ頃からか定着してきました。「育児する男性(メンズ)」の略語ですが、2010年6月、時の長妻昭厚生労働大臣が少子化打開の一助として「イクメンという言葉を流行(はや)らせたい」と国会で発言し、男性の子育て参加や育児休業取得促進などを目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させたのをきっかけに、同語は一気に浸透したそうです。

今やネットでにぎわうイクメンプロジェクト、そのキャッチフレーズが「育てる男が、家族を変える。社会が動く。」です。なんと頼もしいプロジェクトでしょうか。イクメン宣言でバッジをゲット、イクメン度を測るイクメン診断、家事チャレンジ検定筆記試験、実技試験と、ご当地グルメならぬご当地イクメンプロジェクトが各地に広がりをみせています。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した2013年調査によると、妻と夫の育児分担の割合は、妻が8割(79.8%)。妻の4割(41.6%)がまだまだ不満を抱いている現状ではありますが、初めて80%を切り、イクメンプロジェクトの活性化は、きっと日本の妻たちの幸福度をアップさせることは間違いないでしょう…。

「男は仕事、女は家事」…懐かしい言葉ですが、これも化石化の一路をたどっています。今や、こんな言葉を口にしようものなら、そんな男性は、結婚候補リストにあがることすらありません。夫婦分業は今や当たり前、「炊事」「洗濯」「おふろ掃除」そして「育児」と、夫たちの日課手帳に書き込まなければならない単語が随分増えました。時代は確かに変化しているのです。

でも、女性解放(?)の時流の裏で、静かに新しい潮流が生まれていることも見過ごすことはできません。

ある住宅メーカーがつくった広告が議論になって批判が集中、いつの間にか消えた広告があります。洗濯物を畳む夫に妻が「あなたがたたむと変な跡がつくの」「いいのよ、頼んだ私のミスだから」「早く終わったね。ちゃんとやってくれた?」と言い、「その一言が俺を家事から遠ざけた」とドラマ仕立てで描かれていました。この中で「家事ハラ(ハラスメント)」という言葉が使われ、使い方がおかしいと批判が集中しました。

コマーシャルを作成した「旭化成ホームズ」の調査によると、30代、40代の子育て世代で夫の家事参加率は9割に上っています。一方で、食器洗いや洗濯物干しなどで妻から「ダメ出し」された経験があると答えている夫は約7割、そのうち家事のやる気を失ったという夫が9割に達します。

集英社新書『妻と別れたい男たち』にカルチャースタディーズ研究所が発表した「中高年男性調査(2010)」結果が掲載されています。それによると、離婚願望度が高い夫程、家事に関わる時間が多いという衝撃的データです。男性が家事の半分以上をしている(いた)割合が、「離婚願望ない」15.9%、「離婚願望弱い」19.6%、「離婚願望強い」(25.2%)、「すでに離婚」30.9%というように、仕事場では注意されても、惨めなことがあっても耐えている夫たちも、家庭の中では打たれ弱いのかもしれません。

時代は確かに変化しており、求められる男性像も夫像も大きく変わりました。政府が数値目標を設定したからといって、私達も子供を産みましょう!と語り合う夫婦はそう多くはないでしょう。でも、子育てが楽しい!そんなメッセージの発信は、きっと夫婦が向き合うきっかけを提供することは間違いありません。男性も女性も、みんな家庭の温もりを大切にし、家庭を心の安らぎの場にしたいのです。

「イクメン」をもう少し掘り下げてそのポリシーを追求してみると、単なる子育ての協力ではなく、積極的に子育てを楽しみ、自らも成長する男性を指すそうです。育児の美味しいとこ取りではなく、本気で家庭に向き合ってくれるなら、妻たちにとってこれほど嬉しいことはありません。妻たちの笑顔がはじける日本社会になって欲しいものですね。

世論調査グラフ
内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」