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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

この時期に健気に生きる小さな虫たちの中には、人のために陰徳を積むものも

「桜が咲いた2か月後が、その地方のそらまめの旬だそう」(『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版)である。

3年ほど前まで市民農園で野菜づくりに手出ししていたことは前に書いたことがある。その話に触発された友人の編集者が、市の募集に当選して土いじりを始めた。その近況をある雑誌に綴った一節である。

「大地主(3坪ながら)になって2年。家庭菜園1年生の青葉マークをそろそろ外せるかなと思いきや、新鮮な感動を覚えることが未だ多い。それほど農作業の仕事は多様で、百の仕事があるから百姓というものを実感する。/先だっても、そら豆の謂れは空に向けて豆がなるからというのを初めて聞いて、なるほどと思った。/アイシャドウを洗い忘れた淑女のようなクロブチの花は幼少期、田舎の畑でよく見かけたものだが、近隣で植えているのは我が家だけだ」

天に屹立(きつりつ)して房をつけるそら豆は、やがて水平に、次に垂れ下がる。その時が熟れ時で、最高の風味が味わえる旬は3日ほどしかないと言う。

暦での夏は立夏(5月6日)で始まる初夏からで、稲など穂の出る植物の種をまく頃を言う「芒種(ぼうしゅ)」(6日)と、1年で最も日が長く夜が短い頃の「夏至(げし)」(22日)の6月は仲夏となる。夏真っ盛りに入っていくのだが、梅の実が熟す月後半になると梅雨の雨期に入るのと重なる。

テントウムシ

毎日が雨続きの上にむし暑いとなると、ものは腐りやすくなり少しうっとうしくなるが、アジサイの花や水田の稲の苗などは煙る雨にぬれて生き生きとしてくる。この時期に見かける健気(けなげ)に生きる小さな虫たちの中には、人のために陰徳を積むものもいる。家庭菜園をやっている頃、きうりが葉に白い斑点ができるうどんこ病でだめになりガッカリさせられたが、うどんこ病の菌やあぶらむしを食べてくれるのがてんとう虫。稲や野菜にとりついているかまきりは見かけとは違って益虫である。稲や野菜には手をつけないで害虫駆除に働いているから。

宵闇の中に一瞬、ほのかな光の線模様を描き、その夢幻世界に心が癒やされる。ホタルも仲夏に短い命を精一杯に生きるのである。

〈其子等(そのこら)に捕へられむと母が魂(たま)蛍と成りて夜に来たるらし〉窪田空穂(うつぼ)