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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

秋は次にやってくる厳しい季節を乗り切るための気力を養う大切なとき

〈水音も風の音にも九月かな〉副島いみ子

とは詠っても、暦の立秋から3週間余が過ぎて9月となっても、なお猛暑の名残(なごり)に汗をぬぐう日々。「九月の声を聞くと、大気が澄み爽やかな秋の感じがようやく深くなる」(稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』)と思えるようになるのは、まだ少し先となりそうである。

実際の秋を大きく分けると、暦の上では仲秋となる白露(8日)と秋分(23日)がある9月が「はしり」、晩秋の寒露(8日)、霜降(24日)の10月が「さかり」で、初冬にかかる立冬(8日)、小雪(23日)の11月が「なごり」で紅葉のシーズンとなろう。

生活の中でも暑い夏や寒い冬はかなわないが、その間にある春や秋の温順を好むという人は少なくないだろう。春夏秋冬の好みは人それぞれとしても、古来、秋は一番人気の季節とされてきた。

ヤマハギ写真

秋の野辺に咲く花は総じて地味なつくりでも、どこか詩心を誘う素朴な風情と味がありその数も少なくない。「秋の野に乱れて咲ける花の色の千種にものを思うころかな」(紀貫之)と風に揺れる花のさまを「花野」と呼んできたのである。万葉集で一番多く詠まれた花は、秋の七草のひとつ萩(はぎ)だとも言う。

〈ちり初(そめ)てしきりに萩の盛かな〉井月(せいげつ)の句を長谷川櫂氏は「萩は最初の花が散りはじめても次々に花をつける」「萩は散りながら花ざかりを迎える。惜しみなく豪勢だが、はかない萩の咲きぶり」(読売2014年9月6日付「四季」)と解説している。

春と秋は、次にやってくる厳しい季節を乗り切るための気力を養う大切な時である。それが最近は地球温暖化のせいか夏や冬の期間が長引く傾向で、その分、せっかく楽しみな春と秋が短か目に押し詰められているのは面白くない。次に向かう気力が充実しないと、年々重く圧(の)し掛かってくる衰える体力を補いきれなくなる。70歳に近づく身は、血糖値コントロールはしていても、他に病気をかかえているわけではない。それでも「よおーし、この冬(夏)も乗り越えるぞ」という意気込みが、「この冬(夏)は乗り越えられるだろうか」というつぶやきに変わるのである。9月の4連休2日目の21日は敬老の日。天才詩人・宮沢賢治の命日と重なる。