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お日さまニコニコ毎日前進![7]

エッセイスト 櫻井ひろみ

「恋愛」と「結婚」、そして「出産」に見る男と女、今昔

「結婚したくない」の向こうに潜む「恋愛が面倒」の思いを綴った前回のエッセーを読みながら、「でも、本当はみんな結婚したいんじゃないかな〜、最後の皮1枚をむく勇気が持てないんだよね〜」と、つぶやく若者の声が聞こえてきました。最後の皮1枚が障壁になっているのか、いや、皮1枚にしがみついてなんとか今の自分を守る防護壁になっているのか……当の本人もわからないのかもしれません。

冒頭から暗くなってすみません。「ニコニコ毎日前進」のタイトルとは真逆の、「アレコレ毎日後退」が、今の若い方々の結婚事情なのかもしれません。今回は、若者たちの恋愛事情にもう少しコミットしてみようと思います。

昔の男女のお付き合い、すなわち「恋愛」は、密接に「結婚」と結びついていました。しかし、いつのまにか時代の流れの中で「恋愛」と「結婚」は別物になり、若者たちは「結婚」の重荷から解き放たれて自由に「恋愛を謳歌するようになりました。婚前交渉はもちろんのこと、元カレ、元カノといった活字も溢れ、蝶が甘い蜜を求めて花から花へと飛び交うように、若者たちの性の鎖は完全に解き放たれていたはず、だったのですが…。

しかし、時の流れは皮肉なもの、その解放感や自由がむしろ若者たちから、最後の一皮をむく勇気を奪ってしまったのかもしれません。

和光大学准教授の高坂康雅さんが、最近の大学生が恋人を欲しがらない理由を次のように整理されていました。①自分に自信がなく、恋愛に意義がないと考える、②過去の恋愛経験を引きずっている、③現実の生活が充実しており、恋愛はいずれできるだろうと楽観している、④恋愛に費やすお金や時間、労力が煩わしく、恋愛の負担を回避したい——の4種類だそうです。

恋愛を敬遠する背景には、昔には無かった氾濫する大量の恋愛情報が一因なのかもしれません。恋愛情報は王子様に選ばれた幸せなシンデレラのお話ばかりではありません。失恋や恋愛トラブル、憎しみ、妬み、嫉妬、浮気が渦巻く多くの悲劇の結末に、憧れどころか、むしろ、否定的な印象をもつ若者たちも増えてきているのです。

中には「恋愛は選ばれた者の特権」かのように勝手に思い込み、「圏外感」に落ち込む若者も少なくありません。さとりが早いと言ったほうがいいのでしょうか。たとえコクられても「からかわれているだけ」とスルーしてしまうのです。

女性たちは、夏の花火のような恋にはあこがれなくなっています。いや、むしろ、現在の女性たちにとっては「恋愛」と「結婚」、そして「出産」までの関係がつながっているのです。「恋愛が面倒」になった時代を生きる女性たちにとって、結婚年齢の高齢化と、望む男性の希薄化の中で、「恋愛」も「結婚」も「出産」も、ワンセットで人生の大勝負なのです。

電通総研の2010年の調査では、23歳〜49歳の男性の6割が「恋愛では受け身」と答えています。口説く主役が女性に移ってきた今、女性にとっては受難の時代とも言えます。チャンスが少ない以上、女性の結婚相手への要求は高くならざるを得ません。結婚後も自分のキャリアを認めてくれ、家事・育児にも協力、自分より高収入…、何やら昔への回帰現象にもみてとれます。

この際、本当に昔に戻ってみるのも、若者たちの「恋愛恐怖症」からの解放の道かもしれませんよ。恋愛は結婚の後の楽しみにとっておくのはいかがでしょうか。昔は、圧倒的に見合い結婚の方が多かったわけですから、愛があるから結婚したのではなくて、結婚してから愛を育てたのです。意外と、恋愛感情が幸せな結婚を妨げているのかもしれません。

現実的にも見合い結婚の方が、恋愛結婚よりも圧倒的に離婚が少ないのも、研究に値する現実です。恋愛結婚と見合い結婚の比率が入れ替わったのは戦後団塊世代のお父さん、お母さんたちです。

〈ロマンチックラブ・イデオロギーは戦後日本に入りました。「恋愛=セックス=結婚=幸せ」の図式に従って、1960年代から70年代に、団塊の世代が恋愛結婚という壮大な実験をしました。当時は見合いは「古い結婚」、恋愛は「新しい結婚」とされました。ですが、30年たった今、見事にその幻想が破れたと言えます〉。随分以前のエッセーですが、甲南大学教授の上村くにこさんの名言(?)です。

内閣府が6月に発表した2014年度の「結婚・家族形成に関する意識調査」では、結婚願望のある未婚男女は多く、恋人のいない人でも71%は「結婚したい」と答えています。「趣味に力を入れたい」「仕事や勉強に力を入れたい」「友人と過ごす時間を大切にしたい」……大いに結構じゃないですか。男選び、女選びに明け暮れて過ごすよりは、そのほうがず.っと味のある大人になります。

若者の皆さん!「恋愛」は結婚後の楽しみにとっておきましょう。結婚後、人生をかけてときめきながら夫婦愛を育てるのも味なものですよ。