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健康一番 (12)

ジャーナリスト 高嶋 久

話を聞き、依存しない夫婦に

心の面も含め健康に大きな影響を及ぼすのは伴侶との関係です。結婚生活が長くなるにつれ理解が深まるはずですが、別々の世界で生きていると、意外と距離が離れてしまうこともあります。

私が妻によく指摘されるのは、「私の話を聞かない」。車の中にインタビューのテープを置いていたところ、それを聞いた妻が、「人の話はきちんと聞くのに、どうして私の話は聞かないの」。それは、仕事だからなのですが……。

中年夫婦が「夫婦の会話」をしようと外食に出かけたものの、何も話すことがなくて気まずい思いをするなど、ありがちな話です。定年退職した夫が妻に付いて出掛けようとするので、「ぬれ落ち葉」「わしも行く」と揶揄されたり、どうも地域社会で生きていない男性の方が分が悪いようです。

8月に開かれた「日本の看取りを考える全国大会」で、「あなたは誰に看取られたいですか」というシンポジウムがありました。男性たちはほぼ「妻に看取られたい」と言うのですが、日本看取り士会の柴田久美子会長は、「奥さんたちのほとんどはご主人を看取りたくないと言っています」と言われ、しゅんとしていました。

「在家仏教こころの会」という法華経を基本とする教団は、「聞く、語る、しあわせになる」という運動を行っています。宗教団体の大会では代表者が長い話をするのが多いのですが、同会では20分くらいで、集まった人たちの意見発表に多くの時間が使われます。

結婚41年目にして、「妻のいいところを見るようにしよう」と思うようになった66歳の男性は、「今までは、自分の考えの中に入っていなかったら腹が立ち、ついついケンカになっていたが、見方を変えるといいところばっかりが見えてきて、怒りようがないんです」と。40年連れ添った妻に、「お互いの点数をつけよう」と提案した73歳の男性が、「妻に80点をつけたのに、あなたは50点ですよと言われた。わけを聞くと、仕事ばかりで家事、育児は一切しなかったからだと」などなど。

妻の話を聞いたり、妻を褒めたりするには、何より自分が自立した生き方を目指していることが大切です。それは、生活面の細々したことから、何のために生きるのかという大きなテーマに至るまで。

そこで自信を失うと、妻に依存したくなる自分がいるのに気付きます。それでは、妻も気持ちがよくないでしょう。それはお互いさまで、人生は死ぬまで修行と覚悟し、成長を心掛けたいものです。例え体が動かなくなっても、表情や笑顔だけで人に尽くすことはできます。最も身近な人に好まれるよう努力したいものです。