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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

ドライバーには高齢者にやさしい安全運転の徹底に心してもらいたい

干支(えと)が丙申(ひのえさる)である今年は「形が明らかになっていく」「実が固まっていく」年ということだが、シリア問題で火を噴く中東では、今度は正月3日にサウジアラビアがイランと断交を発表、6日に北朝鮮が政府声明で「水爆実験成功」を主張して世界中から非難の嵐を呼び込むなど、いやはや世界は今年も多難な年となりそうだ。

国内でも、こちらは”交通戦争”の話であるが、今年は改めて正念場を迎えることがある。警察庁が4日に発表した統計では、昨年(2015年)の全国の交通事故死者は前年より4人(0.1%)多い4117人(1日あたり11.3人)だった。4人増えた、率にして0.1%増だが、この結果、2000(平成12)年から続けてきた交通死者の対前年比減の連続記録が14年で途切れたのである。

増えたとはいえその数は4人だから、連続減少していたのが一転して「増加に転じた」というよりは「横ばい」ということもできよう。そして、そのためには今年の年間交通死者数を再び減少に向かわせることが求められる。

最大の課題は65歳以上の高齢者を交通事故から守ることである。昨年の高齢者の交通死者は前年より54人増えて2247人だった。交通死者全体に占める割合は、高齢者の統計が残る1967(昭和42)年以降では最も高い54.6%。そして、半数近くが歩行中の事故によるというのだ。

昨秋、地方の市で一人暮らしを続けていた91歳の父親を交通事故で亡くし、遺族となったジャーナリストが、事故の現場に足を運んだ。そこで目撃したのは、事故後も乱暴な運転をする車の往来であったと、深い悲しみを胸に手記を記した。

「現場近くには横断歩道もあるが、かなり危ない。見通しが悪い地点であるうえに、歩行者がいても車は減速しないのだ。/11月下旬に実家に戻ったときも横断中の私に黒の四駆が加速して威嚇しつつ迫ってきた」(「論説委員 日曜に書く」長辻象平・産経昨年12月6日付)。このままではまた事故が、と現場の有様を危惧するのである。

長辻さんはまた、高齢者の交通死者の半数が歩行中に事故に遭っていることから「車の運転者が、路上の高齢者の姿に気をつけるだけで千人の犠牲を回避できる計算だ」と指摘する。ドライバーの皆さんには高齢者にやさしい安全運転の徹底に心してもらいたい。