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健康一番 (14)

ジャーナリスト 高嶋 久

四季折々の花を愛で

母の在宅介護がきっかけで実家に引っ越したのですが、母は花が好きで、家の周りに四季折々の花を咲かせていました。体が不自由になった母に代わって、以後は私が花を植え、絶え間のないようにしています。

早春に琥珀色の花を咲かせるロウバイの次には、韓国で青空をバックに黄色い花が印象的だったレンギョウを植えました。同じ頃に咲くのが梅。母が亡くなり、お骨を裏の畑にあるお墓に入れてから、その前に桜を植えました。22歳で亡くなった長男の思い出には朱色のボケを。その横には、初夏から秋まで長い期間咲くムクゲが、朝花を開かせ夕方にしぼませています。それに競うように咲くのが白とピンクのフヨウ。

サザンカと雪

夏の終わりから冬まで赤い花で景色を賑わせてくれるのはケイトウ。近所の畑で燃えるように咲いていたので、苗をもらいました。秋口に懐かしい香りを運んでくるのはキンモクセイ。家の東側に目隠しを兼ねて植えたサザンカ。11月から12月には花弁の先にピンクの白い花が、続いて赤い花が春先まで咲きます。交替で白と赤、ピンクの花のツバキ。1本は長男の中学卒業記念で、隣には次男がもらった夏みかんが白い花を付け、黄色い実を実らせます。

12月になると、花は白くて小さいのに香りが強いスイセンが冬の到来を知らせ、続いて黄色いスイセンが家の周りを明るくします。母が残してくれた球根を、数年ごとに植え替え、増やしてきました。

以前、イラクで発掘された最古の人骨に花粉が付いていたように、人は愛する人の死を悼んで花を手向けてきました。華道の始まりも仏前や神前に花を供えたことで、人は花に自分の思いを託してきたのです。

青森市にある縄文時代の三内丸山遺跡を見て感心したのは、集落から海辺に向かう道の両脇に、人々の墓があったこと。先祖に見守られながら、漁場への道を往復していたわけで、死者とともに生きていた古代人の精神文化がうかがわれます。1万年にも及ぶそんな暮らしから、亡くなった先祖は身近にいて、私たちを見守ってくれているという信仰が生まれたのでしょう。それが日本人の心をなごやかにし、倫理性を高めたのだと思います。ですから、その後に入ってきた仏教で浄土信仰が広まっても、はるか西方にある浄土が、日本ではごく近い存在になったのです。

いわゆる近代国家は、法律も生きている人だけを対象にしています。死後のことは分からないので、それを視野に入れると混乱しかねないからでしょうが、人々の心は、死者と共に生きることを感じて安定するように思います。これも、愛する人たちを見送って初めて分かったことで、そんな「死の文化」を、花を愛でながら大切にしたいと思います。