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家庭教育アドバイザー 多田聡夫

「家庭力アップ講座」第二章 心の姿勢

(1)家庭の目的を持とう

親の愛情が子供に届く接し方は、子供の気持ちを感じたい、共感したい、分かち合いたい、という心情を先立てて子供に接することです。そのために、行動を変えたいという動機ではなく、気持ちを分かりたいと思って、子供の話を共感的に聞いてあげることなのです。そうすることによって、子供は、親の動機の中に、親の愛情を感じ、素直な心を表現してくれるようになります。そして、子供は、親の願いを感じて、自らが行動を変えていこうとするのです。

皆さんは、家族で、または夫婦で、どんな家庭を作りたいかを話しあったことがありますか。日本では、家族に目的があって、どんな家族にしようかと話し合う習慣は、それほどないような気がします。あちらこちらの講座で、「家族の目的を話し合ったことのある家庭は手を挙げてください」と聞いてみると、1割ぐらいの方しか手を挙げられません。家庭の中に「強い絆を作る」「喜び楽しむこと」ができる関係を作り上げることが、目的になるのです。

ですから、家庭には目的があるのです。家庭生活が日常の中で、なんとなく過ぎ去っていってしまうことが多いのではないでしょうか。気がついたら、子供が大きくなっていて気持ちも分からず、心が通じないので、子供の気持ちを共感することもできなくて、助けてあげることもできなくなるかもしれません。家族の絆やゴールという種が心の中にあったとしても、根が出ず、芽も出ず、花も咲かなければなんと悲しいことでしょうか。根を張り、芽が出て、花が咲き、実が実るように水を与え、家族の絆がしっかりと実るように愛という水と肥料を蒔く必要があるのです。

そうすれば、家庭という眼鏡で全てを見ていくようになっていきます。家庭のような国家、家庭のような組織、家庭のような地域の絆など、家庭という眼鏡で見ていくことができるようになれば、私たちの環境に大きな変化をもたらすでしょう。しかし、私達は意外と、分かっていても心に家族という種を植えたことすら忘れてしまっていることが多いのではないでしょうか。また、家族という種に水も肥料も与えず、そのままにしていることも多いのではないでしょうか。

私の家族はどんな家庭を目指すのか、家族で話し合ってみましょう。

「私の人生」や「家庭」はまるで飛行機の旅のようです。飛行機は、風や雨や乱気流があっても、しっかりと目的地に向かっているので、飛行航路を軌道修正しながら目的地まで飛ぶことができるのです。飛行機に乗って上空まで行ってから多数決で目的地を決めるのではなく、飛行機に乗る時から目的地に向かって飛行機を選ぶようにしているのではないでしょうか。ですから、私たちの家庭でも、目的地がはっきりすることで、さまざまな試練や壁を乗り越えていけるようになるのです。

この講座で私達が目指しているのは、美しい心情文化があふれている家庭です。この文化は、人が育成され、思いやることのできるものです。この心情文化は、家族のメンバーが一緒にいる事を誠心誠意、喜ぶことのできる文化なのです。心情のネットワークで覆われているので、家族同士が、思いやりと感謝にあふれ、信頼関係がしっかりと築かれている家庭となるでしょう。

家族や夫婦で、どんな家庭にしたいのかを話し合ってみましょう。そして、話し合った内容を何かに記録し、家庭の中でよく目立つところに貼っておき、いつも確認できるようにしておくとよいでしょう。

家庭には目的があります。何でも言い合える家族、笑顔の絶えない家族、思いやりのある家族などです。家族みんなが目的を共有することによって、私たちの心の中に家庭という種を植えることができるようになります。そして家庭の中に絆の強い家族的な関係が生まれてくるでしょう。

では、一つの例題を通してこのことを考えてみましょう。

スティーブン・R・コヴィー氏の『ファミリー 7つの習慣・家族実践編』の中の例を用いて考えてみましょう。

これは、なかなかうまくいかない父と息子が、人(コヴィー氏)に相談しながら、次第に父と息子が一つになっていく話です。

父と息子が仲直りしていくのはそう簡単ではなかったことでしょう。父と息子が、仲直りしていくなかでのポイントを皆さんと共に考えてみましょう。以下の文章をよく読んでください。そしてどこが転換点となったのかを考えてみてください。

〈父親によれば、この息子は、「反抗期で、感謝の気持ちを一切表さず、いつもふてくされている」という〉

父:「どうしたらよいかさっぱりわからないんです」

コヴィー:「多分、息子さんは自分が理解されていないと感じているのだと思いますよ」

父:「息子のことはもう十分に分かっているんです。それに私の言うことをきけば、万事うまくいくってことも」

コヴィー:「一度、息子さんのことをまったく理解していないと、考えてみてはどうでしょうか。白紙に戻すだけでいいんですよ。評価したり裁いたりせずに、息子さんの言っていることを聴けばいいのです」

それで、父親は息子のところへ行って、次のように切り出した。

父:「私はお前の話をもっと聴かなくっちゃいけないな。たぶんお前のことをあまり理解していなかったと思うので、もっと理解したいんだ」

息子:「父さんが僕のことを理解したことなんか1回たりともないよ」

* * *

父:「コヴィーさん駄目でしたよ。私が何をしてやろうとしているのか分からないのです。もう希望がないですよ」

コヴィー:「息子さんはあなたの誠意を試しているのですよ。あなたは、本当に息子さんのことを理解したいと思っていないですね。あなたが望んでいるのは、息子さんの行動を改めさせることだけなんですよ」

父:「行動を改めないとだめです。あの坊主は。息子は自分のやっていることが悪いことだとよく分かっているはずなんです」


(4月号に続く)