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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

今年から短期決戦となった就職活動は桜の開花とともにいまが真っ盛りに

花見山・桜

「メモしつゝ早や四月よとひとりごと」 星野立子。

桜の開花とともにさまざまな花が咲き、一気に華やいでいく野山で、深まる春を謳歌するような鳥たちのさえずりが心地よい季節を迎えた。学校では新学年が始まり、会社も新入社員のフレッシュな活気で若返る。新年とは別の、新たな出発を迎える月である。

だが、来年春卒業する大学生にとって今は悠長に構えていられない時期である。大学生の就職活動がすでに3月1日から始まり、会社説明会などの広報活動も同時に解禁。企業の面接や筆記試験などの選考開始が、昨年の8月から6月に前倒しされるから。学生は企業研究などの準備期間、企業は学生への周知期間がそれぞれ短くなる。6月には内定を出す企業が多くなると見られ、まさに短期決戦となるのである。

就活に目の色を変えて動くのは企業と学生だけではない、という話を一つ。大学も当事者でもあり、成績優秀な卒業生をトップ企業に就職させることでランクや評判を上げようと必死なのがよく分かる話である。

友人の息子は私大の理工系を卒業して、日本を代表する製造メーカーの一つ、それも企業を背負うエリートぞろいの研究開発部門に就職した。おそらく、そこは東大、京大、東工大、私立では早稲田、慶応出ぐらいでないと行けないところというイメージがあったので、率直に「ほう、すごいけど、よく入れたね」と聞いてしまった。

友人は大学の応援がすごかったと言う。その大学ではメーカーに一人だけ、推薦できる枠を持っていた。といっても推薦できるだけで、それで即入社が保証されるわけではない。自力で試験や面接をパスしなければならない。

そこで、大学側が行ったのは試験、面接の3か月前から、友人の息子の特訓である。先生は推薦枠で入社した先輩。その成果なのかどうかは分からないが、合格した。最後の関門は面接であった。役員会議室の大きな楕円机の長い両端に、面接役員と1対1で向かい合った。ぼそぼそ小さな声での質問が聞こえない。そこで息子は突然、椅子を転がして役員の近くまで運び、そこに座り直して質問を確かめ応答したと言う。

どうやら、完璧ではなかったが、そのとっさの行動が合否を分けたようだと言うのである。勉強の成績も大事だが、企業はそれ以上に度胸や行動の資質をにらむようだ。