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ふるさとづくりのススメ 実践スローライフ〈1〉

ジャーナリスト 高嶋 久

ぜんそくの次男のため妻の故郷へ移住

最近、地方創生の一環として都会から地方への移住が進められています。少子高齢化に悩む地方では、家賃支援などで都会からの移住を奨励していますが、豊かな自然環境の中で理想的なスローライフとはいかず、いろいろな課題も見えてきています。

地方移住のネックは、仕事、濃密な人間関係、文化施設を含めた住環境などです。地方で就職すると収入が減る一方、生活費は安くなります。福井市の試算では、生涯収入で1000万円以上有利だそうです。近所付き合いなどへの対応は、移住の経緯や本人・家族の性格、暮らし方、年齢や子供の有無も大きく関係してきます。つまり、個人差や地域差が大きいので、家族の事情に即しながら、無理のない暮らし方をするのがいいでしょう。

私の経験からすれば、移住は高齢になってからではなく、40〜50代の働き盛りで体力にも余裕のある時に始めるのがいいと思います。都会の人たちの意識調査でも、50代男性の半分以上が地方移住に関心を持っています。これに対して女性は30%くらい。それは女性の方が都会での暮らしのネットワークを作っているからで、「あなた一人で行ったら」と言われるケースもあるようです。

実は私はその逆のケースで、妻の方が実家のある長野県駒ヶ根市への移住を決めたので、私は東京で仕事を続け、週末に帰宅することにしたのです。私がやりたいメディア関係の仕事は東京でないと難しいし、幸い駒ヶ根は高速バスで新宿から3時間半で、1時間に1本出ていました。

移住したのは1991年12月、私が43歳の時でした。子供は小学校4年の長男と3年の次男、3歳の三男の3兄弟。最大の理由は次男がひどい小児ぜんそくだったことです。何度も夜中に救急病院に連れて行ったり、学校も休みがちで、どうにも回復しないことから、思い切って住環境を変えることにしました。

駒ヶ根では妻のいとこが教育カウンセラーをしていたことも決め手になりました。彼の考えに共鳴した妻は、いとこに相談しながら次男の病気と不登校を治そうとしていたのです。結果的にそれは成功しました。次男は5年生の1年間、入院しながら通学できる塩尻の病院に入院し、ぜんそくを治して、6年生から元の小学校に復帰できました。

私は週末は完全に家族と過ごせるようになったことで子供たちとの関係も密になり、近所に農地を借りて野菜を作ったり、テニスやスキーをしたり、田舎暮らしを楽しむことができました。市役所に転入届を出したとき、「単身赴任です」と言うと、担当者に「そうじゃのうて、出稼ぎずら」と言われたのは、少しショックでしたが。