機関誌画像

お日さまニコニコ毎日前進![14]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

「母娘がつくる友達親子」に見る男と女、今昔

「友達親子(ともだちおやこ)とは1990年代半ば以降、親子関係・家族関係の中で顕著になった現象の一つ。特徴として、子供に対して、親として権威を持って接しようとせず、若者という共通の土俵で友人のように接しようとする。」(ウィキペディアより)

友達親子…いつからかメディアにこんな活字が躍りはじめ、今では気にとめることもなく、親子関係の文化にすらなりつつあるような気もします。街角を歩く親子のペアルックファッションや、頭からつま先まで同系列でコーディネイトされた友達親子、それだけではなく、母娘が互いに名前で呼び合う関係にまで発展している親子すらお見受けする時代になりました。

こんな社会風潮の急激な変化に戸惑うお母さんたちも少なくありません。ネット相談室には溢れる不安の声が飛び交っています。

「小6の娘がいます。娘の友達のお母さんはとても若くて、服装もお子さんが着ているようなのと変わらない格好をするそうです。ときどき、ペアルックも着るんだとか。ジャニーズのファンで、お子さんとコンサートにも行くそうです。娘はそんな友達がうらやましいみたいです。おそろいの服を着たり、恋愛の話もしたり、まるで友達みたいな親子、みなさんはどうですか?」


そんな質問に回答もまちまちです。

「考えが古いと言われるかもしれませんが、私は親と子は友達でも姉妹でもなく、あくまで『親子』であるべきだと思います。子供の趣味を理解するのと、まねっこするのとは違います。仲が良いのは大変良いことですが、親として節度をもってほしいものです」…といった厳しい目線もあれば、「娘が私の靴やカバンをねらっています。男の子と違って、いっしょに買い物に行っても、友達みたいな感覚になっちゃいますね。お互いの服装に意見を言い合ったり。なので、楽しいです。ちょっと若返る気がしますし。でも、怒るときは『私はお母さん、あなたは子供』とはっきり言いますが、普段の態度を知ってるのであんまり聞いてないかもしれません。怖い大人の役はお父さんに任せてます。」(http://education.mag2.com/otaku/bn104.html)といった、友達親子にすっかりはまっている回答もみられます。

子育ての悩みは、親にとっていつの時代も避けて通ることができない宿命です。その宿命を楽しみながら超えていく親もいれば、逃げ回る親、そして、悩みなど何も無いかのように過ごしている親もいます。友達親子は、 この第三の部類に入るかもしれません。

2005年になりますが、サントリー次世代研究所が「現代親子調査」というアンケート調査を行った際、親が答えた中で最も多い「理想の親像」とは「何でも話せる友達のような親」でした。

この調査は、豊かな中に生まれ「我慢」や「努力」の必要がない時代に、親がいかに子供を導いていくのか、現代の子育て世代ならではの特徴や課題を探るために実施したもののようですが、多くの親たちが選択した道は、 「友達のように何でも話せる親」「どんなことでも相談できる優しい存在」ということです。

子供の話によく耳を傾け、理解ある親でいたいとの思いが強いからでしょうが、調査結果からは、親が子供の意向を優先する傾向が強いようです。子供たちにとって、何でも話せる親がいることは幸せなことです。ただ、 子供からのこんな回答があることも見逃してはいけません。

「私と私の母は友達親子でしたが、ものすごく深刻な悩みとかは相談できませんでした。思春期の頃は、母親業を放棄しているとしか思えない母にそこまで信用をおけなかったのです。なので友達関係だったとしても、イザというときはしっかりと母親の役割を果たしてください。そうじゃないと子供としては親を頼りにできません。」(前述のサイトより)

友達親子のお話が長く続きましたが、このコーナーは男と女、今昔!でしたね。でも、この友達親子の問題は、男と女の関係が大きく絡んでいるんです。特に、夫の愛情の希薄さに不満を抱く妻が、より友達親子に埋没しているようです。

心にすっぽり空いた空洞を、子供と対等な位置に降りてその関係で満足させようとする。あるいは、夫婦関係の微妙な揺れからくる親としての負債感から友達感覚でゴマかしてしまう。近年多いのは、仕事のために子供との接触時間が減る分、子供の要求を満たしてあげられないことに罪悪感を抱いて、何でも子供の要求を叶えてしまう母親も多いようです。

今の時代を生きる子供たちは、無邪気に本音を吐き、それゆえに時にはぶつかり合ってしまう、という体験が少なくなりました。せめて親子の間だけでも、言いたいことをいい、時に喧嘩しながら理解しあっていく生身の関係を積み重ねて欲しいものです。

たとえ友達親子でも、子供の前に母として毅然として立たなければならない時もあります。そんな時、母としての立ち位置を保障してくれるのは、何よりも夫の理解と愛情です。時代の変化に合わせて妻への愛情も進化が求められているのかもしれません。