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ふるさとづくりのススメ 実践スローライフ〈2〉

ジャーナリスト 高嶋 久

「住めば都」にするために

本連載のタイトル「ふるさとづくりのススメ」とは、自分の住む地域を故郷にすることが大事だという意味です。それは、都会であろうと田舎であろうと同じです。

川崎のマンションに住んでいたころ、私は地域になじもうと、町内のソフトボール大会に出場したことがあります。ところが、選手は旧住民が中心で、勝利にこだわるあまり、新顔の私は試合に出してもらえませんでした。

ところが引っ越しした駒ヶ根市の町内では、新年会で歓迎され、ソフトボール大会でもフル出場でき、バッターボックスに立つと奥さんや子供たちが声援を送ってくれました。ここに引っ越してよかったなと思ったものです。

ふるさとというのは親密で心地よい人間関係が基本で、住む場所が田舎か都会かは関係ありません。互いに好ましい関係をつくっていくことが大事になります。

移住先に妻が探してきた空き家は、高速バスのバス停から徒歩10分で、便利でしたが、一見あばら家。初めて家を見た長男が「ここじゃないよね」と不安げに言うと、妻は平然と「ここよ」と答えたものです。

寒い信州に真冬に引っ越したので、最初はすきま風を防ぐため懸命に目張りしました。中央アルプスの東、南アルプスの西、天竜川沿いにある駒ヶ根市は、冬は寒いのですが雪はそれほど降りません。車で10分の駒ヶ根高原スキー場は、12月下旬から人工雪でオープンしていました。

学生時代に一度だけスキーをしたことがあったので、早速道具をそろえ、スキー教室で半日習い、すぐリフトに乗りました。昼間は雪が溶けてべとついたりするのですが、夜になると乾いて快適な雪になり、スキーヤーも減るので、思う存分滑れます。

金曜日の夜、バス停から我が家まで歩くと、月明かりに雪を被った峰が見え、学生時代に主人公のモデルになった実業家に会ったことのある、北杜夫の『白きたおやかな峰』を思い出したものです。妻には「みんなつましく暮らしているのに、あなたは帰るたびにスキーに行って」となじられましたが、郷に入れば郷に従えです。

隣の伊那市にはエプソンが寄贈したテニスコートがあり、200円で使えました。そこで、伊那市に住んでいるテニス好きの若者を紹介してもらい、一緒にプレーしました。仲良くなった歯科医と看護師を誘って楽しんだこともあります。山麓の自然環境は安曇野に負けないくらいで、マウンテンバイクで走りました。住めば都で、いろいろな楽しみを見つけるのがふるさとづくりにつながります。