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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

高齢者が杖をついてでも何でも格好に構わず歩くことは生きている証

いま住んでいる東京・武蔵野の団地から私鉄駅までの道すがらや駅前ロータリーで、よく高齢者が懸命に歩いている姿を見かける。2本足で歩いている人は多くない。

たいていは片手に杖をついている人だが、その杖やスキーのストックのようなものを両手に持って歩く人。片手にキャスターを杖代わりにして引いている人、松葉杖の人、前に折りたたみイス付や買い物カゴ付き4輪キャスターを両手で押し歩く人、4本足の歩行器を支えに歩く人などその姿はさまざま。なかには杖もつかず2本足で歩くのだが、腰が90度近く曲がってお辞儀するような格好でゆっくりゆっくり歩くお年寄りや、前向きには歩けないのかブロック塀に手を付き横歩きする人もいる。

そんないろいろな人が、通勤などですたすたと普通に歩く人に抜かれながらも自分のペースで懸命に歩いている。そうした人とすれ違ったり、見かけたときに、私もよく立ち止まったり振り返ったりする。そして、その懸命な姿を目に焼きつけ〈頑張って歩いてください〉と心の中で応援するのである。

他人事ではない。リハビリが必要な家内も似たようなもので、近くのスーパーに買い物に行くのも、片手は杖、もう一方の手は買い物用キャスターに頼って歩いている。キャスターが買い物用というより、杖代わりだと分かったのは家内とスーパーに行ったときだ。買い物袋は私が持ち、家内は杖ともう一方は私と手をつないで支えたのであるが、私の手にかかる重圧に驚いたのである。

手や杖などに支えられながらも毎日、外歩きすることは大切なことである。昨年3月に都内で開かれた日本財団ケアポートフォーラムで、日本転倒予防学会の武藤芳照理事長は転倒するのは「転ぶくらい体が弱っている」からだが、それを自覚している人は多くない。しかも「その後の1年間に再び転ぶリスクは約5倍ある」と警告している。ところが、ひざが悪くなっても杖を使わない人が少なくない。杖をつくと「ひざが悪いと(他人に)分かってしまう」からだと言う。

脳卒中の病後回復にもリハビリは欠かせない。だが「リハビリする姿を人に見られたくない」と屋内に閉じこもりがちになる人も少なくない。そんなふうに心まで萎縮すると、さらに体力が低下して悪循環から寝たきりとなるリスクが高まる。杖をついてでも何でも格好に構わず歩くことは、生きている堂々たる証なのである。