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親日・国際家庭インタビュー 〔17〕

シロン・弥美(ひろみ)さん

(今回はフィリピンにて日本人の奥様にインタビューしました)

喧嘩しても寝る前には「アイ・ラブ・ユー」

日比国旗

——自己紹介をお願いします。

結婚後、最初の約5年間は日本で過ごし、その後2004年にフィリピンに移住しました。フィリピンでの生活は今年で12年目になります。子供は1男3女。現在、夫は日本で仕事をしています。

——ご主人はどんなかたですか?

夫はとても優しくて、謙虚な人です。フィリピンでは、ボディビルのルソン島チャンピオン、私服警察、博士号取得などで、周りから持ち上げられることが多かったようですが、そういったそぶりは一切見せません。また、とても愛情表現が豊かで、私にも子供たちにも、ほめ言葉をたくさん投げかけてくれます。喧嘩をすることもありますが、必ず分かり合えるまで話し合ってから休みます。どんなに喧嘩をしても、寝る前には「アイ・ラブ・ユー」と言ってくれるのは、すごいなあと思います。男の人は謝るのが苦手な人が多いと聞きますが、彼は自分が間違えたと思ったら、必ず謝ってくれるし、「気づかせてくれてありがとう」と言ってくれるような人です。

今、夫とは毎日数回、フェイスブックメッセンジャーでのメッセージのやり取りが主です。インターネットの接続状況がいい時には、スカイプなどで直接のビデオ通話も行います。週に一度は、家族全員にカメラを回して話をします。

——フィリピンの親族との交流は?

フィリピンの親族は、ルソン島北部にたくさんいます。以前は、電話も電気もない場所だったので、訪ねていくしかなかったのですが、今は、携帯電話やフェイスブックメッセンジャーなどで、気軽に交流を楽しめるようになりました。

——言葉の問題、習慣の違いは?

言葉の問題はありますね。フィリピンは80〜100ほどの言語があるといわれています。夫はイロカノ語が一番自分を表現できるそうですが、両親とはまた別の言語で話していますし、兄弟の結婚相手とはまた違う言語で話しています。フィリピン語としてタガログ語ベースの言語が国語として認定されたのが1980年代なので、私と同年代くらいまでの人は、英語での会話に問題はありませんが、逆にフィリピン語はタガログ語圏以外の人は深い言葉の意味は分からないようです。

みんなで助け合う風土

——フィリピンで感じる文化の違いは?

まず感じるのは、気候が人間に与える影響はとても大きいということです。フィリピンは湿度が高いので、どんなにいいものを買っても長持ちしません。日本で数万円した革靴なども、久しぶりに出すとボロボロになっています。日本のように、何年も大切にとっておく、ということができないせいか、モノを大事にできない、先々の計画が立てられないところがあります。暑いので、根気を入れすぎると疲れてしまうせいなのか、適当な面も(笑)。明るい日差しの下にいるせいか、くよくよしませんし、失敗してもたいして反省もせず次に進む、という印象です。

また、社会全体、国全体が「家族」という感覚です。日本のように、外向けの待遇・対応が少ないように思います。公共の乗り物では、お客さんを乗せた後にガソリンを入れに行きますし、レジのお姉さんが、BGMに合わせて大声で歌ったり踊ったりしているので笑って見ていると、「一緒に踊ろう!」と言われました。イベントなどを自分が主催しても、招待した人たちに準備を手伝ってもらったり…。緊張感がないというか、距離感が近いというか、やはり、「家族の延長」、「国全体が大きな家族」、という表現が一番しっくりします。

そして、この二つの特性を合わせたものが、金銭感覚という形で顕著に出ます。例えば、どこかに行く時、交通費などが準備できなければ、日本人なら当然、「行かない」という選択になりますが、フィリピン人は必ず行きます。みんなでガソリン代を割り勘にして車で行きます。お金がない時はシラ〜っと座って、出しません。そして周りの人で、出せる人が出します。街を歩いている見ず知らずの人からでも、「帰りの交通費がないので下さい」と頼まれます。でも逆も然りです。自分が持っているときは、後のことは考えず、他の人の分も出してくれます。とても幸せそうに、「助けることができて、幸せです」と言って。学費なども、日本では親が準備するのが当然ですが、フィリピンでは奨学金制度が充実していて、頑張る気持ちのある子供には、返す必要のない、大企業や市長・知事などの奨学金もあります。また若者が両親や年寄りの面倒を見るのは当たり前のこととして、家族・親戚全体で面倒をみますし、兄弟間でも年長の者が、弟や妹の学費を準備するのは普通です。一見、無計画で無責任な感じに見えることも、よく知ってみると、日本より健全で、みんなで助け合い、それを楽しんでいる感じがします。

教育の一環として訪比を

——日比関係の将来については?

フィリピンと日本は、今後もっともっと近い国になっていくだろうなと感じています。少子化が深刻な日本と、子だくさんのフィリピン。慎重すぎて動けない日本人と、あまり考えずにガンガン動くフィリピン人。この両国がお互いの良さを引き立て合って協力し合えたら、世界に向かって大きな貢献ができると思います。そのためには、両国が理解し合うことと同時に、お互いが世界的な視野をもって、自国の役割を自覚し歩めるような教育が必要だと思います。フィリピンは、世界の縮図のような国なので、世界中の子供たちの教育の場としてとてもいいと感じています。なので、そういった企画ができたらと考えています。日本からも約4時間で、比較的訪問しやすい国です。一方フィリピンは、外国人が入ってくることによって動いてきた国なので、双方にいい影響があると思います。