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お日さまニコニコ毎日前進![20]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

時代の風に揺れる男と女、今昔

このコーナーでのコラムも10回目(担当の号で)を迎えました。振り返って、「お日さまニコニコ毎日前進」のタイトルに込められた編集部のご期待とは真逆の内容が、なんと多いことでしょう。お日さまニコニコどころか、お日さま毎日ガックリ!といったところでしょうか。

それだけ、時代とともに男と女を取り巻く環境の変化が激しく、先行きの視えない時代に突入しているからなのかもしれません。晩婚化、非婚化、少子化、経済格差…若者たちの結婚事情を取り巻く環境はあまりにも「ニコニコ」から遠いのが現実です。また、メディアも手を変え、品を変えて、これでもか!というほどに危機意識をあおってくるので、1億2千万の国民も「で、私にどうしろって言うの?」と開きなおるしかなく、昨今では見て見ぬふりを装う若者たちもずいぶん増えてきました。

NHKスペシャル「縮小ニッポンの衝撃」(9月25日放送)はタイトルの通り、衝撃でした。100年近い国勢調査史上初めて減少に転じた日本の総人口の未来図を示しながら、大都市「東京」も五輪開催の2020年に都民が減少に転じるというもの。地方都市では、縮小傾向が加速化し、行政サービスも”撤退戦”を余儀なく選択、若者たちの流出を止めるどころか、市民の生きるべき生活インフラが断たれ始めているというのです。

2020東京五輪に向かってますます世界が注目し、新しい東京の顔も選出され、何やら期待も膨らんできているのですが、その裏で、東京五輪はニッポン縮小化の始まりの祭典ともなるのです。

あ〜、また「ニコニコ」からはど〜っと遠のいてしまいました。

さあ、こんな時代を生き抜く未婚の男と女、時代の変化にどのようについて行こうとしているのでしょうか? 環境に身をまかせ、カメレオンのように保護色で身の安全を図りながら世渡り上手な男女もいれば、俺はオレ!流を貫きながら時代に乗り遅れる男女もいます。特に、後者の人種に属する未婚の男たちは結構厳しい現実に直面しています。

男性の中で、若い世代と30代後半より上の世代では、その生態に随分変化が表れました。若い男性たちは自分自身のことや、自らが置かれている状況に柔軟(=要領よく?)に対応していきます。女性に先を越されてもあまり抵抗も示さず、頑張っても給料はそんなに上がらないのでガツガツしませんし、無理もしません。「草食系」と言われようが気にもせず、家族や友人との小さな関係に満足し、他人にも優しい男性が多いように感じます。現状に対する満足度も結構高く、それなりにハッピー感覚で生きているのかもしれません。多様化した生き方とでも言うのでしょうか。

ところが、その上の世代は「男は家計の稼ぎ手、妻は家事」といった1970年代の鎧(よろい)をかぶり、化石化し始めていることに気付かないのです。しがみついていた終身雇用は時代の風で吹き飛び、気づけば失職、非正規雇用の憂き目に遭う男性も少なくありません。早く錆びついた鎧を脱ぎ捨てて、時代の風を肌身で感じてみることが必要です。

もちろん「壁ドン」(壁に手をつけて女性を口説く)も「顎(あご)クイ」(女性の顎をクイッとおしあげる)も否定はしません。ときには女性もたくましい男性に、ここぞという時はリードして欲しいと思うものです。だからと言って、女性を高級車やおしゃれなレストランでもてなし、仕事の野望や出世欲むき出しといったキン肉マンは、リングから降りる時代を迎えているのです。勢いのあるバブル世代を身近に見ながら育った団塊ジュニアを先頭に、この世代の受難期がはじまっているのです。

ものごころついた時にはすでに日本経済の勢いがなかった若い世代は、ちょっと違います。核家族化も進み父親の帰りも遅く、「男はかくあるべし!」といった見本もあまり身近にはありませんでした。彼らはかぶるべき鎧もありませんでしたから、常に時代の風に身を任せて生きてきました。

特に、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通した人脈を大切にしながら、バーチャルとリアルの融合の中で、多彩な生き方を身に着けています。仕事や地位、持ち物などで見栄(みえ)を張ることもなく、頑張ったからといって未来が約束されているわけでもないので、「今」を楽しむ風潮の中で、未婚男性は結構楽に生きているようにも見えます。

良く言えば時代の流れに柔軟、悪く言えば「今」しか見ない未来逃避。これからやって来るであろう未来に自分はどう生きていくのか、考えることを避けた未婚男性にとって「結婚」は約束のできない単なる幸せ物語なのです。少なくても、未来の妻には働いてもらわないと困る。想像できるのは「共働き同居」。これで良しなら結婚も考える。でも、子育てまでは今は遠く想いが行かないのが現実なのです。

鎧を脱ぎ捨て、未来を見据えながらも今自分に向かって吹いてくる時代の風を受け止めるあなたに、きっと「お日さまニコニコ」が待っていますよ。