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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

「古典の日」制定から5年の今年は原点に戻り「源氏物語」をテーマに記念フォーラムなど

まず古典について、新聞コラムから。

「蕪村の句〈老おいが恋わすれんとすればしぐれかな〉は二百数十年も昔の人が詠んだとは思えず、作者名を隠せば平成の作品で通るだろう◆……源氏物語で光源氏が老いを語る言葉〈さかさまに行かぬ年月よ〉には誰もが深くうなづく◆何百年も前の作者と、あるいは作中人物と、時を超えて会話できることが古典に触れる喜びに違いない」(読売「編集手帳」平成21年11月4日付)

「情報やストーリーを超えたものが名著にはある。……繰り返し読まれる本が名著、その中で100年単位でなお残るものが古典ということだろうか▼『万葉集』であれ『平家物語』であれ、古典は長い時間によるテストをくぐり抜けてきた。『万葉集』は1200年に至る長期間の再読を経て現在も読まれ続けている」(世界日報「上昇気流」平成28年9月30日付)

文化の日の3日をはさむ10月27日から今月9日までの2週間は読書週間で、今月1日は「古典の日」。「国民が古典に親しむことを促し、その心のよりどころとして古典を広く根づかせ、もって心豊かな国民生活及び文化的で活力のある社会の実現に寄与」するための日として、平成24年8月に超党派の議員立法で制定された。

きっかけとなったのは平成20年に京都で行われた「源氏物語千年紀」である。日本の誇る世界最古級文学である「源氏物語」が文献(紫式部日記)に初登場したのが寛弘5(1008)年11月1日で、これにちなんだ千年紀記念式典で制定をめざす宣言がなされたことに始まる。その後、古典を文学だけでなく、幅広く音楽や芸術、茶道、囲碁・将棋なども含めた文化的な遺産ととらえて顕彰する日となったのである。

制定から5年を迎える今年の記念日は、京都では原点に戻り「源氏物語」をテーマのフォーラムで、国文学者・林望氏の基調講演、三笠宮彬子女王殿下と歌舞伎の中村勘九郎さんの記念対談などが行われる他、各地で多彩な行事が行われる。

ちなみに、「源氏物語」は西暦2000年を前に米ライフ誌が選んだミレニアム千年の出来事100選に、日本からは広島被爆、明治維新とともに選ばれている。また25カ国以上に翻訳されていて、世界で割と知られた世界の古典の一つという評価もある。

日本人でも、万葉集や芭蕉、蕪村の俳句はともかく、古文の「源氏物語」はハードルが高い。優れた現代語訳本がいくつもあるので、構えずそこから入っていけばいいのである。