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愛の知恵袋 99

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

好きこそ物の上手なれ

転職しても長続きしない夫

30代でパートの仕事をしているA婦人から相談を受けたのは、5年ほど前でした。

家族は子供が2人いて、もともと夫婦仲も良いほうだったのに、夫が転職を繰り返し、収入が安定しないので、ついつい喧嘩になってしまうということでした。

「うちの夫は就職しても長続きしないんです。それで転職するんですが、半年もしないうちに『自分には合わない』と言ってまたやめる…。その繰り返しです」

「ご主人は、適応障害とか、何か精神的問題をお持ちですか?」

「私も最初はそうかな〜と思ったんですが、そういうことでもないようです」

「では、働くこと自体を嫌がるとか、やる気がないというわけではないんですね」

「はい。辞めたら、ハローワークや情報誌で必ず次の仕事を探します。その時には、私も手伝っていますから…」

「今まで、どんな点を目安にして、仕事を探してきましたか?」

「もちろん、少しでも給与や福利厚生の条件がいいところですけど…」

そこで、私はひとつ思い当たることがあったので、仕事の探し方を変えてみることを提案しました。

「給与や福利厚生の良いところではなく、ご主人が好きな分野、得意な分野に絞って仕事を探してみてはどうでしょうか」

仕事を辞めなくなった夫

それから3年ほど経ったとき、またAさんから電話がありました。

「先生、奇跡が起きてます! あのあと就職した所で、夫はずっと働いています」

「ほう、それは良かったですね」

「安かった給料もだんだん増えたし、何より、夫の顔つきが変わっちゃったんです。仕事に張り合いがあるらしくて、生き生きしてるって感じです!」

彼女は、私に相談したあと、夫とじっくり話し合って、”好きなことは何か”を考えたそうです。彼が好きだったのは自然や植物で、園芸が趣味でした。そこで、ある造園関係の会社に就職しました。会社が小さいことや給料が安いことが気にはなりましたが、好きな分野であることを第一優先にして決めました。すると、彼は半年たっても、1年たってもやめませんでした。それどころか、どんどん技術も上達して、今では、先輩から「見どころがある!」と言われるようになっているとのことでした。

好きこそ物の上手なれ

『好きこそ物の上手なれ』ということわざがあります。「どんなことであっても、人は好きなことに対しては、熱心に取り組めるので上達が早い」という意味です。

最近、「仕事が長続きしない若者が増えて困っている」という話をよく耳にします。そして、”ゆとり世代””夢がない””わがまま””根性が足りない””協調性がない”といった点が指摘されます。

確かに、戦中・戦後のハングリーな時代に生きてきた世代から見れば、恵まれた環境で育ってきた世代には、そういう弱点はあるかもしれません。しかし、仕事が長続きしないのは、もっと別なところにも原因があるように感じています。

それは、仕事を探すときに、”待遇条件のいいところ”にこだわり過ぎることです。

初任給、福利厚生、残業の有無、休日、3K(きつい、汚い、危険)でない仕事…などの条件、そして、できるだけ大きな会社、名の知られた会社…といった点にこだわって探していることが多いのです。

その結果、「職種に適合できない」「仕事に情熱を持てない」「スキルが身に付かない」という葛藤が起こります。結局、上司や同僚ともうまくいかなくなって、それら全てがストレスになって、仕事をやめてしまうことになります。

好きな分野で、生き生きと働こう

そんな場合は、給料や外的条件はいったん忘れて、自分は「何が好きなのか」「何が得意なのか」「何なら興味を持てるのか」をもう一度じっくり見極めて、自分が関心を持てる分野の仕事を、小さな一歩からでも、まずやり始めるのがよいと思います。

人は、自分の好きな事には興味が湧き、熱中することができます。時間も忘れて取り組めるので創意工夫がすすみ、スキルもアップして、その道の”エキスパート”になることができます。やればやるほど伸びていくのです。

何よりも有難いのは、仕事に違和感や疎外感がなく、喜びを感じることです。

不思議なことに、自分に合った仕事は、肉体的な疲れはあっても、精神的には疲れません。結局、ストレスがないので、生き生きと働くことができるのです。