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お日さまニコニコ毎日前進![22]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

「人とのつながり」に揺れる男と女、今昔

日本の近代史の流れにおいて、お見合い結婚と恋愛結婚の比率が入れ替わったのは団塊世代が思春期を迎えてからであり、まだ半世紀しかたっていません。GHQの統治の下、終戦後から吹き始めた新しい風は男と女の間にもそよ風(?)のように流れ込んできました。

男と女が「見合い結婚は古い結婚、恋愛結婚は新しい結婚」と、未来の幸せは自分で掴み取る!との意気込みで果敢に挑戦したようで、見合い結婚ありきの時代風潮に風穴を空けたかたちとなりました。良し悪しは別として、現代の若者たちの自由恋愛市場は団塊世代の皆様の勇気と決断の恩恵に浴していると言ってはおおげさでしょうか…。

近年、90%以上の結婚は「新しい結婚=恋愛結婚」が常識となっており、好きでもない人との結婚は考えられないといったところでしょう。アダム・スミスは市場経済が「見えざる手」に導かれて経済は成長すると説かれたそうですが、今日の結果は、まさに男と女が主役の結婚市場にも「見えざる手」が働いてきた結果なのでしょうか?

もしそうだとしたら、昨今の男と女の結婚市場から、「見えざる手」は徐々にフェードアウトして、本当に見えない手になりつつあるのかもしれません。いや、ニーチェが叫ばれたように「神は死んだ」との声も聞こえてくるかもしれません。

「体験の風を起こそう」運動で知られる国立青少年教育振興機構が、平成28年11月1日付で発表した「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」は、なかなか興味深い視点でデータを集めています。

全国の20代と30代を対象に4000人(20代前半、20代後半、30代前半、30代後半の4つの年齢群ごとに男女各500人。既婚1606人、独身2394人)のアンケート結果です。

【結婚に関する部分の調査結果の結論】

図1 結婚願望の推移
(画像クリックで拡大します)

①平成20年度調査と比較すると、「早く結婚したい」割合が低下し、「結婚したくない」割合が上昇している。(図1)

②結婚していない理由として「経済的に難しい」を挙げる人は6割を超えているが、個人の年収が300万円以上になると「経済的に難しい」を理由に挙げる人は減少する傾向がみられる。

③結婚していない理由として「一人が楽である」を挙げる人が約5割。

「見えざる手」も現代の若者たちに見切りをつけて、結婚市場に背を向け始めたのかもしれません。メリット・デメリットで言うなら、結婚のメリットがなかなか若者たちの心に届いていないのが現実なのでしょう。

と、まあここまでは庶民の肌感覚で誰もが感じているところですが、さすが「体験の風を起こそう」運動はつっこみどころが違います。調査は小学校時の様々な体験と結婚との関係を切り口に調査をさらに深堀りしています。

図2 小学生の時までの体験全体と結婚経験の関係
(画像クリックで拡大します)

④小学校の時までの体験が多い人ほど、「結婚している」「結婚したい」の割合は高くなる。(図2)

⑤体験の種類に注目すると、体験が多い人と少ない人で「結婚している」割合の差が大きくなるのは、「友だちとの遊び」、「家族行事」、「地域活動」の順である。

⑥中学生や高校生の時の異性との関係のうち、「異性関係は面倒なものだと思う」については、「とても当てはまる」人の「結婚したくない」割合が最も高い。それ以外の「異性にも自分の考えをはっきり伝えることができる」などの項目については、「全く当てはまらない」人の「結婚したくない」割合が最も高い。

⑦ふだん、近所付き合いをしている人は、「結婚したい」割合や「子供は欲しい」割合が高い。

「友達との遊び」「家族行事」「地域活動」「近所付き合い」…どれもが「人とのつながり」が求められる体験です。男と女が正面から向き合って、相手の良いところも、欠点も丸抱えしていくのが結婚です。そう考えると、「責任が重い」「自由が奪われる」「異星人と一緒な生活空間は大変」と考えている若者たちには、最も避けたいのが結婚なのかもしれません。

しかし、調査では地域とのつながりについて、「他人のためにもなるが自分の成長にもつながる」、「これからの良い社会を創るために必要である」などの前向きな考えが強い人ほど、「結婚したい」割合と「子供は欲しい」割合が高くなります。

小学校時に「人とのつながり」を持つ「体験」が多ければ多いほど、発想や思考もポジティブな大人になっていることが分かります。

現代はデジタルな時代。かつては、遊びは近所の子供たちが集まってワイワイ・ガヤガヤ、夕暮れ時になれば、夕日を背に家に帰る「ALWAYS三丁目の夕日」ワールドだったのでしょうが、今やデジタルワールド。友達、家族、地域の人間関係にデジタルが入り込み、その功罪に振り回されているのが現実です。

「結婚しない若者たち」の解決の道は、小学生のデジタル環境の克服の方が近道かもしれませんね。体験の風を起こしましょう。