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ふるさとづくりのススメ 実践スローライフ〈10〉

ジャーナリスト 高嶋 久

イノシシ対策で住民が結束

夜中、2階の部屋で仕事をしていると、「ブヒッ、ブヒッ」という音が聞こえてきました。1階の居間で寝ている妻のいびきかと思いましたが、どうも違うようで、そのうち、「ドドドドッ」と地面を走る音が聞こえたので、イノシシだと分かりました。何頭かが群れになって山から下りてきたのです。3年ほど前から、イノシシの被害が発生するようになりました。

私たちの集落は平地にある低い独立山のすそに沿って家が並んでいます。最初は山の竹やぶや畑が荒らされていたのですが、やがて実りを迎えた田んぼにも出没するようになったのです。走り回るので稲がなぎ倒され、収穫できなくなってしまいます。

イノシシは毛にダニが付くので、それを取るため泥まみれになるのです。山にドングリなどのえさが少なくなると、里に下りてきてミミズなど探すので、畔を掘り起こす被害も出るようになりました。春から夏にかけてはタケノコが最大のえさで、犬の8倍もある嗅覚で掘り起こして食べます。イノシシが食べ飽きた頃、人間がタケノコを掘るのです。そのうちイノシシが車に衝突する事故も起きるようになりました。

市からの通知で、政府からフェンスの提供があり、自治会で山すそに張ることになりました。70代の自治会長が臨時総会を招集したのですが、非農家の人もいて話がまとまりません。老人はとかく上から目線で話すので、若者たちは反発するのです。頃合いを見て、企業の役員を退職した60代の人が話をまとめたので感心しました。

市の指示は、フェンスの両側2メートルを伐採し、設置後14年間、自治会の責任で管理することです。数人で山すそを歩き、設置ルートを決めました。作業をしたのは11月から12月の日曜日の午前で、4日かかりました。竹やかん木は切りだし、空き地に集めて焼却しました。フェンスの所々に扉を設け、出入りできるようにします。

イノシシを退治する方法には猟銃と罠がありますが、住宅が近いと銃は使えません。罠には箱型のものと足を捉えるくくり罠とがあります。後者は犬が被害に遭う可能性があるので、箱型のものを買うことにしました。約4万円で、農業共済から約3割の補助金が出ます。罠の設置には免許が必要なので、所持者の名義を借りました。

専門家を招いて罠の設置の仕方、えさのまき方などの講習を受け、出没箇所に2台を設置。3週間後に、子供のウリボウがかかりました。市に提出する写真を撮った後、かわいそうですが電気ショックで殺し、穴を掘って埋めました。

面白いことに、イノシシのような共通の敵が現れると地域は結束します。大きなイノシシがかかれば、ぼたん鍋にしてさらに親交を深めたいと相談してる昨今です。