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親日・国際家庭インタビュー 〔22〕

新田浩資/具惠瓊(ヘギョン)さん

家族を愛し、地域を愛して…

日韓国旗

——韓国で約10年、家庭生活を送ったあと、15年前からご主人の実家である山口県平生町で暮らしているそうですね。

浩資 子供(すべて男子)3人は韓国で生まれましたが、彼らの教育を考慮して帰国、私の父がはじめた造園業を継ぎました。

——日本と韓国で文化の違いを感じましたか。

惠瓊 私は最初、日本に慣れるのに精一杯だったこともあって、文化の違いはあまり気になりませんでした。違いを感じても「そういうものなのか」と受け入れるように努力しました。
 ただ、韓国社会は家族愛が強く、親戚付き合いも幅広いという特徴があります。たとえば、親戚が訪ねてきた時、「どうぞ」と言えば、当たり前のように家に入ります。友達同士でも同じです。ところが、日本では「どうぞ」と勧めても、遠慮してなかなか家に入らず、外で話すこともあります。韓国ではあり得ないことで、大変驚きました。

浩資 韓国で生活していた時、私は文化の違いを感じました。日本人は他人に迷惑をかけてはいけないという気持ちが強いので、意見の違いがあっても相手の感情を傷つけまいとして口に出しませんね。結局、問題解決は先延ばしになる。建前と本音というのでしょうか。
 でも、韓国人は意見の違いがあっても、遠慮なく主張します。けんかに見える時もありますが、本人たちはただ意見を出し合っているだけ。だから、意見が一致しなくても、本音を理解しあうことができるので、逆に仲良くなれます。
 家内とは最初の頃、言い合いのようになると、私にはわだかまりが残り、翌日になってもなかなか声をかけられない。ところが、家内は何事もなかったように、「おはよう」とあいさつしてくるので驚きました。

惠瓊 日本人の友人に、私は質問されなくても、主人や子供のことを話しますが、友人は自分のことはあまり言わず、ただ聞くだけが多いですね。それだと、心が深く通じないようで物足りなく感じます。

料理をきっかけに心開いた交流へ

——近所づきあいで苦労はありますか。

惠瓊 平生町は田舎ですから外国人、とくに韓国人ということで、最初は厳しい視線を感じました。三男が通っていた幼稚園で、ある若いお母さんから「北朝鮮と違うの?」と言われた時には言葉がでませんでした。
 文化の影響力を感じたのは「冬のソナタ」の放送(2004年)をきっかけに広がった韓流ブームです。韓国ドラマや料理に興味を持った人からいろいろと質問を受けるようになりました。幸い、私は料理ができたので、うちの台所で、本場の韓国料理の作り方を教えたら、今度はその方がご自分の友人を連れてくるようになり、そこから評判が広がり友人がどんどん増えました。

浩資 パソコンでレシピを作り、いつでもプリントアウトできるようにするなど、いろいろ工夫していますよ。

惠瓊 家に20人くらい集まって、いろんな韓国料理の試食会をして喜んでいただいたこともあります。日本に来たころは、日本語ができずに知り合いもいなくて、寂しく苦しかったのですが、一歩ずつ努力したことで友人もできて、生活が楽しくなりました。今では「北朝鮮と違うの?」と言った方がコンサートを聴きに、韓国に行くようになりました。親しくなった人たちは、わが家のピンポンを鳴らして「ヘギョンさ〜ん」と言いながら、韓国式に入ってくるなど、心を開いて交流してくれるようになりました。

浩資 韓国語を教えたり、韓国料理で友人たちをもてなしたりしたことが評判を呼んで、近くの高校から韓国料理や文化について話してほしいという要請があって、年に1、2回教えています。生徒の反応も良く、「生涯で一番いい思い出ができました」という感想文もありました。
 婦人会の担当が回ってきて、一年間、地域のお世話をしたことがあります。その時は、私が造園の仕事でうかがったお宅からは「すばらしい奥さんですね」「うらやましいですね」と、お褒めの言葉を何度もいただきました。それだけ認められるぐらい、一生懸命努力してくれたのだな、と感謝しています。

惠瓊 主人の両親が熱心に地域の世話をし、とくに義父が近所から慕われていました。外国人の私がそういう家庭に入って、最初はいろんな噂があったかもしれません。でも、こちらから率直に教えを請うなど、積極的にコミュニケーションをとるように努力したところ、今ではまるで姉か妹のように受け入れてもらっています。それもこれまでの新田家の信頼基盤があったからなのだと思います。

家族愛の伝統を大切に

——息子さんたちに望むことは。

浩資 みな日本に住んでいますが、3人と も韓国で生まれたので、親や家族を大事にする韓国の伝統は受け継いでほしいですね。

惠瓊 子供たちが帰省すると、自分のお小遣いで買ったお土産をおばあちゃんに渡しますので、おばあちゃんは喜んでいます。
 主人が男だけの3人兄弟だったこともあって、新田家にはこれまで家族が集まるという習慣はなかったのですが、おばあちゃんの誕生日には孫たちが必ず集まるなど、子供たちは韓国式に家族を大切にしています。おばあちゃんは「ヘギョンのおかげで、家族の大切さが分かった」と言ってくれます。今は本当に幸せです。