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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

合格祈願の絵馬鈴なりの湯島天神で、百花に先駆けて咲く白梅が放つ凛とした気

「そうだ! 酉(とり)年なんだ。2月号は『鳥の博物館』訪問記にしよう」

そう思ったのはヤシの林道で車幅ほどある大きな広い翼を広げて立つスグロハゲコウ(コウノトリ科)など、ブラジル、パラグアイ、ボリビアの三カ国にまたがる世界最大の大湿原「パンタナール」の鳥たちの楽園のカラーグラフ特集(世界日報1月4日付)に魅せられたからである。

地球の裏側のパンタナールまで足を運ぶのは大儀だが、国内で唯一、鳥類だけを扱う鳥の博物館(千葉・我孫子市)なら、コンドルなど約500点の世界中の鳥(剥製)も並ぶし何か面白い話もあるだろう。世界的な研究機関として知られる山階(やましな)鳥類研究所が隣接し、近くに野鳥が戻りつつあるという手賀沼もあるし。前から一度、行ってみたいところであった。

ところが、ネットでガイド情報を調べると、運の悪いことにここは空調工事のため1月末まで休館との表示。それで、2月はやはり梅だと思い直した。梅は奥が深いから何回か書いていても重なることはない、とばかりに自らを納得させて行き先を同じメトロ千代田線のずっと手前、湯島駅(湯島天神、東京・文京区)に変更した。

学問の神としての菅原道真と白梅で知られる湯島天神の境内は、合格祈願の絵馬が鈴なり、おみくじの納め棚も一杯、参拝の受験生とその家族らで大賑わいだ。訪れたのが1月上旬ではとてもムリ、せめて梅園の雰囲気だけでもと花に期待していなかったが、何本かの白梅が花をちらほら咲かせているのは愛(いと)おしかった。一斉にパッと咲き散る桜と違い、梅は咲き始めが木によってそれぞれ違う。

寒さが残る早春に、寒さに負けず百花に先駆けて凛(りん)として上品な紅白の花を咲かせ、香気を放つ。その群れない花一輪一輪がそれぞれ内に秘める個性豊かな気(き)を発しているようだ。

〈冬の梅あたり払(はらい)て咲きにけり〉一茶

暦の上で2月は春(4日・立春、16日・雨水)とはいえ、実際の生活実感は余寒の冬がしぶとく居座る。それでも土の底では何かが兆し始め、大地に少しずつ春の希望がのぞくのである。

皇后陛下の御歌に〈幾光年太古の光いまさして地球は春をととのふる大地〉がある。