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お日さまニコニコ毎日前進![24]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

「いきなり結婚」に向き合う男と女、今昔

昨年11月、NHKクローズアップ現代が特集を組みました。タイトルは「恋人いらないってホント?出現、いきなり結婚族」。「いきなり結婚」…またまた新語登場?!と思いきや、年配の方から「昔は”いきなり結婚”がむしろ主流だったよ」と言われ、確かに!と納得してしまいました。

でも、その背景は随分違っています。「婚活」という造語が世に出てから10年、「結婚するぞ!」の気持ちむき出しの「婚活」ですが、突然飛び出してきた「いきなり結婚」は多くの現代の若者事情を背負っているようです。

冒頭の番組は、途中経過の恋愛をすっ飛ばして、すぐに結婚を目指す若者たちを追い続けました。

登場したタマエ(仮名)さんは結婚相手をネットで募集。しかも年齢・年収・見た目は問わないという条件。3週間で25人から応募があったとのこと。条件は良いということでずいぶん好評だったようですが、気になるところは決して彼氏になって欲しいとか、恋人になって欲しいとかではなく、単なる結婚相手として求めているに過ぎないところです。

「旦那になるかどうかのインターン期間として一緒に住んでみるのもいいと思っています。シェアハウス的に過ごすことができるパートナーを求めている」とのこと。

他の登場者は「仕事もプライベートも充実していて恋愛したい気持ちはゼロです。ただし、子供は欲しいので結婚はしたいんです。結婚しておいた方が得なことも多いと思う気持ちもあります」と公言。「子供のことについての意思決定の時に一緒にジャッジしてくれる人がいると安心します」と、結婚相手というよりは共同経営者と表現したほうがふさわしいのかもしれません。

確かに近年、若者たちが抱える経済格差ともいえる貧困状態が結婚観の変化をもたらした大きな要因の一つであることは間違いありません。

結婚の利点を「経済的余裕を持てるから」と答えた女性の割合が2005年には12.0%だったのが、2015年には20.4%(国立社会保障・人口問題研究所)に上昇しています。「結婚を急ぐのは家計をシェアして生活を安定させたいから」「気持ち的にはすぐに同棲でもいい」との番組での発言もうなずけます。

もう一つの要因には、結婚前のプロセスにあるムダがイヤ!というのがあります。何年もつきあって結局駄目だったという話を聞くと、それまでの時間がムダと思っちゃう若者が増えてきたそうです。①デートに使うお金のムダ、②いちいち喜んだり落ち込んだりする感情のムダ、「いきなり結婚」はそういうものが省ける利点があるということなのでしょう。

長引く恋愛は大きなコストとなり、それを縮めるためにはいきなり結婚しかない!という結論を出す若者たちが増えてきているということです。

2007年に「婚活」という言葉が広がった時は、「出会いが無いから結婚できない」という人が多かった背景がありますが、「いきなり結婚」には恋愛をコストと考える若者が増えてきた背景があります。

街角には恋愛を「面倒くさい」と考える若者たちが急増しています。その多くの若者たちが、LINEやFacebookといったSNSでの苦い経験をもっているようです。LINEで告白をしたら、残念ながら恋は叶わなかった。ここまでならよくある話ですが、相手とのやりとりを写された画像を友人たちに拡散されて、失恋話があっという間に広がってしまった経験を持つ若者もいて、SNSで行動が筒抜けになることが恋愛を難しくしている環境があります。信頼していた人間関係が崩れたり、勘ぐられるのも面倒くさいので、その行きつく先が「恋愛はめんどい」なのです。SNSの拡散は出会いを楽にした反面、SNS監視社会ができあがってしまったとも言えます。

交際相手がいない未婚者の割合
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国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、独身で恋人がいない人数(18歳〜34歳)は2005年には男性52.2%、女性44.7%だったのが、2015年には男性69.8%、女性59.1%に上昇しました。その理由も「恋愛は面倒」が最多であり、「彼女いない歴=年齢」の若者たちが増加しています。「面倒」はそんなにマイナスなのでしょうか?

昨年末に世間を騒がせたテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ!」。制作側も想定外の高い視聴率を獲得し、エンディングの「恋ダンス」も国民を巻き込んで人気を得ました。就職活動に失敗して自分の存在意義を見失っていた女性と、家事をしてくれる人を探していた男性、お互いの利害が一致した二人はいきなり結婚することに…と言っても契約結婚ですが、いきなり結婚願望の若者たちの思いを一手に引き受けた番組となりました。

視聴者の若者たちからは「見ると毎週、早く結婚したくなる」「安定した生活を送りたい」といった様々な声が寄せられました。「面倒」の向うに利害では言い尽くせない心のつながりの醍醐味も味わえたからこそ、多くの視聴者が番組を覗き込んだのではないでしょうか?

失敗する余裕を失った若者達にも、失敗も捨てたもんじゃない!と思える番組だったかと思いますが、読者の皆様にとってはいかがだったでしょうか?