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ふるさとづくりのススメ 実践スローライフ〈12〉

ジャーナリスト 高嶋 久

望ましい地域社会を目指して

私は若い頃からの延長で川崎市のマンションに仕事場を持ち、家族は香川県の農村に暮らしているので、都会と田舎の両方を体験しています。仕事場は友人2人とシェアし、近所付き合いは全くない、個人として仕事に特化した生活です。それに対して田舎では、労働から野菜づくりまで助け合う、伝統的な地域共同体の暮らしです。

都会の暮らしは自由で、経済活動には最適ですが、それで幸せかと聞かれると、物足りなさがあります。若い頃はそうでもなかったのですが、高齢期になると、世話し世話される関係のない暮らしは何とも味気ないものです。もちろん、多くの人は会社や趣味などの組織に属したり、文化的な要素で都会の孤独を埋め合わせているのだと思います。

一方、田舎暮らしの問題は、濃厚な人間関係にあります。助け合いがうまくいっている時はよくても、感情のもつれなどでこじれると、近くに住んでいるだけに息苦しくなります。都会からの移住者が田舎で一番苦労するのは、そんな人間関係でしょう。

そこで課題は、私たちがどんな地域社会を目指すかです。自治会活動をして気づいたのですが、多くの人が人や地域のために役立ちたいと思っていることです。1970年代に人間の欲求は①生理的欲求、②安全欲求、③社会的欲求、④尊厳欲求、⑤自己実現欲求のピラミッド構造になっているという「マズローの欲求5段階説」が話題になりました。マズローはアメリカの心理学者ですが、彼は自己実現の先に自己超越欲求があるとも言っています。自分を超える欲求で、公益心や宗教心がそれにあたるでしょう。人は最終的にそこに到達しないと「幸せ」だとは思えないようです。

イノシシのわなを設置した時、いつもは自治会活動に消極的な男性が、狩猟免許を持っている友達を紹介してくれ、わなの購入や設置、えさに使うぬかの入手から見回りなどに進んでかかわるようになったのです。自分の特技が生かされると、人は積極的に動こうとします。一人ひとりのそうした思いに火を点つけるリーダーシップが、今の時代には求められているようです。

幸せを基準にした人間関係を考えると、要するに「お世話され上手」になることです。私たちは人生の最後には誰かの世話にならなければなりません。そのための練習をしていると考えればいいのです。

その点、感心するのは女性で、見るからにお世話したくなるかわいい老婦人がいます。それに引き換え男性はこだわりが強く、年をとってもよろいを着ているようです。関西風の損得勘定からも、体力のあるうちにお世話をするのは、やがてお世話になることを想定して、お世話され上手になるためだと言えましょう。何かの参考にして頂ければ幸いです。