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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

4月は陽光の下、若葉が萌え、花が咲き、チョウが舞い、鳥が歌う、自然が華やぐ季節

今年はまだ見かけないが、昨年の今ごろは住まい近くの公園の小さな林で、よく黒アゲハチョウに出会った。こんなところで、と珍しいものを見るように立ち止まって、しばらく眺めていた。

花畑や野菜畑の作物や花の間をひらひらと可憐に飛ぶモンシロチョウや黄チョウなどは、たもを持って追いかけた子供のころからのおなじみだった。壮年となったころに市民農園で小松菜やキュウリなど野菜作りをしたことがあったが、そうなるとモンシロチョウなどの幼虫に、丹精込めて生育した野菜の葉っぱを食い荒らされて泣かされたものである。

とても〈♪菜の葉に飽(あ)いたら 桜にとまれ 桜の花の 花から花へ……〉とか〈♪ちょうちょもひらひら 豆のはな 七色畑(なないろばたけ)に 妹の……〉と童謡で歌うような世界とは距離ができてしまったのである。

アゲハチョウ類はどこでも見かけるわけではないが、モンシロチョウより大きくて、黒と黄色の大柄模様が高貴な気品を漂わせ、その出合いに子供心を躍らせたのを覚えている。私の故郷は岐阜だが、その名を冠したギフチョウは故郷の誇りである。「春の女神」と呼ばれ、桜の季節にやってくるが「今年もまた逢えたという喜びは年ごとに深まり、今はただ、胡蝶(こちょう)の舞を幸せな気持ちで眺めている」(能楽師狂言方・山本東次郎氏=日経「あすへの話題」平成27年4月4日付夕刊)と、蝶の愛好家を夢中にさせるほどの魅力を秘めている。アゲハの仲間で日本の固有種。幼虫が雑木林に生えるカンアオイの仲間を食べて育つので、その存在が里山環境保全の指標ともなる。

クロアゲハ

昨年、光の具合によっては高貴な色とされる紫がかって見える黒アゲハチョウをよく見かけることを家内に話すと「あの林にはサンショウの木があるはずよ。黒アゲハはサンショウの葉にたまごを生み、幼虫はその葉を食べてチョウになるから」と、こともなげに言う。後日、林の中を調べると、たしかにサンショウの木が何本かあった。分かってしまうと、珍しさも神秘性も色あせてしまうが、それでも今年もまた林の中を優雅に舞う黒アゲハチョウを眺めたいとの期待は高まってくる。

4月は陽光が明るさを増す中で、若葉が萌え、花が咲き、チョウが舞い、鳥が歌う、自然が華やぐ季節なのだ。