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お日さまニコニコ毎日前進![26]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

「育児・家事」に向き合う男と女、今昔

コーヒーショップで「時の流れが速い!芽が吹いたと思ったら、もう枯れすすき!」と大笑いしながら語り合う白髪の老婦人の会話に思わず耳を傾けました。「昔は…昔は…昔は…」と何度も同じフレーズが飛び交う話題の中心は、息子夫婦の噂話。というよりは嘆きを込めた愚痴のこぼし合いとでもいいましょうか…。

スーツ姿で出勤する夫にゴミ袋を持たせる嫁への怒り、妻の言いなりになっている息子への嘆き、嫁いでも仕事を止めようとしない嫁のわがまま、次から次へと飛び出す怒り発言に、気づけば思わず手帳に書き留める自分がおりました。(職業病でしょうか…)

あっと言う間に1時間、コーヒーを口にするのも忘れ、途切れることのない臨場感あふれる会話に引き込まれてしまいました。

お二人の老婦人の会話を耳にしながら、確かに時代は流れ、世代間のギャップは確実に広がり始めていることを確認させていただき、貴重な時間を過ごさせていただきました。「婚活」「婚育」等、時代と共にその世代を反映する言葉が造語として世に出てきましたが、結婚後においても「育メン」「パラレル家事」といった男と女の家庭内事情を反映する言葉も造られてきました。

育児休業を終えて職場復帰するとき、仕事と家庭をどうやって両立させるのか、妻たちには新たな悩みが浮上しますが、何と言っても夫の協力なくして解決の道はありません。先の老婦人の息子夫婦はそんな事情を抱えているようです。昔と比較したら夫の育児や家事への協力は当然!と考えるのが現代の若者たちです。

ただし、思いと現状のギャップはまだまだ大きいと言えます。

通信販売会社のオークローンマーケティングが2016年、首都圏の20歳から50歳代の会社員男女800人に行った調査では、女性が家事や育児と仕事の両立に必要なこととして、男女ともに「夫や家族の理解・協力」(女性81%、男性72%)を最も多くあげました。

男性の育児・家事の無償労働時間
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しかし、経済協力開発機構(OECD)が2016年主要26か国の家事や育児などの無償労働時間をまとめた結果、日本の男性は1日あたり62分、最も長いデンマーク(186 分)の3分の1でした。世界の先進国家の中で日本の女性たちへの育児・家事負担の割合は、まだまだ大きいと言えます。

最近では、職場復帰に向けた夫婦セミナーも増えており、男女がお互いにそれぞれの考えを述べあい、互いの役割や協力の仕方を決め合う意志疎通の場を提供しているビジネスも広がってきているようです。

特に、「こんなはずじゃなかった…」と嘆く男性側の価値観の転換を図り、家事の主体は妻ではなく、夫婦共に主体なんだと自覚してもらうことが第一関門となっています。

「精神的な安らぎの場が得られる」「子供や家族を持てる」が、若者たちが考える結婚の利点(国立社会保障・人口問題研究所調査)ですが、努力せずして得られるものではないことは、結婚後、すぐに悟ることになります。

交際相手を持たない理由
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そもそも、現代は異性との付き合いを敢えて避ける若者たちが増えています。内閣府の調査結果によれば、20代から30代の男女が交際相手を持たない理由は、「自分の趣味に力を入れたい」「恋愛が面倒」が上位を占めています。

まず「自分の快、不快」があり、さらには相手に気を使いながらKY(空気が読めない)と言われないように努力すること自体が「面倒」なのです。そんな男女が結婚後、自分の快よりは相手の快に気を使い、相手の願いを悟って率先して育児・家事に取り組むことは至難の業です。

それだけに、結婚後の夫婦セミナーの需要が拡がりつつあることは納得がいきます。

特に、自分の努力を棚に上げて「口にしなくても以心伝心」などと、今や風化してしまった言葉にしがみついていたら、気づけば振り向いてもらうことすら難しい関係になってしまうこと必至です。「気づいて欲しい」と他力本願の姿勢を捨てて、はっきりと「伝える」ことが求められる時代です。

多くの女性は言います。「別に自分と同じだけ育児・家事に関わって欲しいわけではない。話し合えるように向き合って欲しい。知って欲しい。それだけでも満足度は高まります」と。

今の時代、圧倒的に共働きの時代です。同じ職場ならまだしも、多くはそれぞれの職場で人間関係に気づかい、業務責任をこなすために努力していますが、互いがその内容を理解できないままでいるのです。「私だって…」と喉元まで出てきてもグッとこらえて、相手の職場の苦悩に関心を寄せてあげるちょっとした配慮が、夫婦の関係を強めてくれるかもしれません。

日本社会は、女性が男性と対等に働くことがまだまだ難しい環境もありますが、せめて家庭内では夫に良き味方であって欲しいと願うのは、女性のわがままでしょうか?

互いに想いを言葉で伝える! 家訓の片隅に加えておきましょう。