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お日さまニコニコ毎日前進![27]

家庭教育アドバイザー 多田聡夫

「家庭力アップ講座」 共感的聞き方

子供の事情を理解する

私たち親はさまざまなことがあったとしても、子供を愛していることに違いはありません。ただ、愛しているからといって、親の愛情が子供に届いているかというと、そうではないのです。そして、親という立場で、意外と子供を理解しようとはせずに、子供に要求ばかりしていることが多くなってしまいます。それでは、親の愛情が子供に届かないのです。今回は、親の愛情の伝え方を、話の「聞き方」、「話し方」を通して、学んでみたいと思います。

今までの親の対応を見ると、「良かったらほめる、悪かったら叱る」ということが多かったのではないでしょうか。このことが全て問題だというわけではありませんが、良かったら褒めるというのは、そんなに問題はないのですが、「悪かったら叱る」ということを少し考えてみましょう。

例えば、子供が犬に餌をあげる役割を担当していたとして、子供が3日間犬に餌をあげないので、親は仕方なく、犬に餌をあげていたとしましょう。そうすると、子供は犬に餌をあげる責任があるわけですから、怒られても当然なのですが、親は自分の基準に合わせて叱っている場合も多いのです。また親が問題を持っているから叱る場合もあります。心に余裕がなく、感情的になりつい叱ってしまう場合です。

子供が犬に餌をあげることは子供の責任であるわけですが、何かの事情を抱えていることもあります。いじめられていたり、壁にぶち当たっていたりすることもあります。ですから、子供が、犬に餌をあげなかったことは、子供からの何らかのメッセージだと理解することもできます。親の価値基準で、子供を判断していますが、子供には子供の観点があるのです。まず、子供の事情を理解してから子供に対しての接し方を決めてもいいのです。

子供が問題を抱えたときやってはいけないことは、命令、脅迫、説教、提案、非難、賞賛、同情、侮辱、分析などです。不登校になったときに、「学校に行かないと立派な人間になれないよ」と言って、学校に行かせようとする。また褒めるということもいけないようです。それから激励、質問も避けたほうが良いでしょう。

名古屋での「いじめによる自殺」の例を紹介します。

もし親がよき相談相手になっていれば自殺は起こらないことが多いのです。ところが両親が相談相手になれないことがあります。名古屋で自殺した子の遺書には、子供の悩みを何とか解決しようと、親が子供に質問した10の内容が書かれていたのです。その親は、子供がなぜ質問に答えなかったのかと悩んでしまいました。親から質問されることが、子供にとっては苦痛になることがあります。質問された子供には、それに答える心の余裕さえなかったのでしょう。ですから答えたくないという子供の気持ちを理解することが必要なのではないでしょうか。子供の7〜8割が、親から理解されていないと感じています。

親は何とか、子供に回答を教えてあげたいと思うのですが、「教える」というのは、親の心を満たすだけになりがちで、子供に愛情が伝わらない場合が多いわけです。共感的に子供の気持ちを理解してあげることが、親の愛情が伝わる方法であり、子供の問題を解決できる方法になるのです。

黙って子供の話を聞く

ここで、「共感的聞き方」の例を『10代の子どもの心のコーチング』(菅原裕子著、PHP研究所)より紹介します。


〈私には高校生の息子が一人います。それまでの私は、息子に対し、話すことと言えば指示・命令・説教ばかりでした。この子はどうしてこうなんだろうと、息子を責めることばかりでした。ただ親が黙って、息子の話を聞くだけだから簡単だろうと思っていましたが、子供の話を聞くために何も言わないで「黙る」というのはなんて大変なことか…。黙って私の指示や命令を聞いていた息子はエライ。

そして黙り始めて1週間。黙って話を聞く私に対して、「調子が悪いの?」が息子の反応でした。それまで、私の話を、聞いていた息子に、自分が話すチャンスが巡ってきたのです。

そして、今までの不満もふきだしました。「4、5、6年は学校がつらかった。特に5年の時は学校でもガミガミ、家でもガミガミ。はっきり言って自分の居場所がなかった。家のベランダから飛び降りようと思ったけれど、やめた」

「母ちゃんに自分の意見を言うと3倍になって返ってくる。だから言う気もなくなるし、こわい」…

私は今までのことを心から詫び、息子が死なずによかったと思うと同時に、自分の不安から、息子に無駄な言葉を浴びせ、傷つけていたことに気がつきました。

それに対して息子は

「でも、今、おれは気にしてないよ。5、6年の担任から教えてもらったこともあるし、今は楽しいし。母ちゃんのアドバイスも、役に立ったこともあるから」

息子のこの言葉に本当に救われました。今も、つらかった過去のことを少しずつ話してくれています。私の黙って話を聞く習慣も身につき始めています。…〉


この例の中でとても大切な二つのポイントがあります。一つは、「今までのことを心から詫び…」とあります。これは、母が子供の話を共感的に聞いてみて、子供の心がわかっていなかったと、初めて「自覚」できたのです。二つ目は、「自分の不安から無駄な言葉を浴びせて、子供を傷つけていた」との「自覚」ができたこと。自覚できたので、子供に詫びることができたのでしょう。親の詫びる気持ちが、子供が親を許す気持ちにさせたのです。その結果「今、俺は気にしていないよ」と素直に話してくれたのでしょう。私たちは、意外と人の心を共感する聞き方に慣れていないのです。ですから、「共感的聞き方」の練習をしてみる必要があるのではないでしょうか。

子供が自分の不安を打ち消す方向に向かうまで、黙って話を聞くようにします。黙って子供の話を聞くことは、子供が何をどう感じているのかが分からないと、「なんとかしてあげる」ことができないからなのです。特に思春期の子供には、親が話を聞くのに、もっと本気度が必要です。 (次号に続く)