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お日さまニコニコ毎日前進![28]

エッセイスト 櫻井 ひろみ

「異性」に向き合う男と女、今昔

「気を使うのがメンドウなんだよね…、なんかムズイっていうか…」

「生活の優先順位ですか? まず、自分の時間! 次は友達! そして、生きるための仕事ですかね…。恋愛? それはパス! このバランスを崩したくないですから…。でも、いずれは結婚しようとは思ってますよ!」

街角で恋愛についてマイクを向けられた若者達が、こんな言葉を笑顔で返す姿に、時代の大きなうねりを感じるというのは、ちょっと大げさでしょうか?

「恋愛は面倒、恋人なんかいらない…」といった若者たちの声を拾って特集するメディアが随分増えてきました。「恋愛」は現代の若者達にとっては不確実性やリスクが高く、できれば避けたい「選択肢」となっているようです。

一方で、そんな若者たちに厳しい声を寄せる投稿もよく目にします。

「デートで気を使うのは当たり前、失敗を恐れる若者たちが情けない」「自分の時間を最優先する若者たちは自己チューの極みだ!」…等々、なんと手厳しい御言葉でしょうか。

豊かさが右肩上がりの時代に青年期を通過した世代は、「恋愛して当たり前、できないのは何かおかしい」といった風潮の中で、売れ残りのクリスマスケーキにならないために日々努力を重ねた思い出が強いのでしょう。恋愛しない若者たちを「草食」と呼ぶ世間の声に、意外と納得しているところもあるのかもしれません。

ただ、「恋愛」が選択肢の一個に並べられて、その順位が徐々に押し下げられているのには、それなりの言い分もあるようです。右肩上がりの豊かさもとっくに終焉(しゅうえん)を迎え、非正規社員の若者たちも決して少なくありません。また、「コンプライアンス」といった言葉が飛び交う中で、職場恋愛はほぼご法度。それどころか、相手のとらえ方次第では「セクハラ」とも言われかねません。

また、かつては想像もしなかったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やラインの出現で、現代の若者たちは「SNS村社会」に生きています。恋愛をして失敗したらたちまちうわさが広まり、「村」での居心地も最悪になります。KY(空気が読めない)とのレッテルが貼られないように周囲との調和に気づかう苦労は、先輩諸氏が経験することもなかった世界なのです。

交際相手を持たない理由
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交際相手を持たない理由(20〜30代)を尋ねた内閣府の調査によると、上位に「恋愛が面倒」「自分の趣味に力を入れたい」があり、「仕事や勉強に力を入れたい」がそれに続きます。(右図参照)

趣味や仕事、勉強に力をそそぐことは大いに称賛されるべきことで、草食系と揶揄(やゆ)される原因がそこにあると言い切るには無理があります。むしろ、「恋愛が面倒」と感じる背景には、さらに続く「異性に興味がない」「異性と交際するのが怖い」の方が、大きな要因と思われます。

さらに内閣府の調査で「異性と交際するうえでの不安」を尋ねた結果があります。

交際への不安
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「異性に対して魅力がないのではないか」が男女共に筆頭(「出会いの場がない」を除く)にきます。もちろん本人の思い込みが強いといえばそれまでですが、SNSでつながった村社会に生きていると、相手に誤解されないように、傷つけないようにと言葉を選ぶセンスや、絵文字で気持ちをざっくり表現する才能は身につきますが、リアルにふれあい、目を見つめ、相手の表情を読み解きながら接することへの苦手意識は助長されるばかりなのです。

ましてや「恋愛」ともなると、感情や思いをリアルに伝え合うことが求められるだけに、相手が自分に対してどう感じているのか絵文字のカードでも掲げてくれた方が、もしかしたらコミュニケーションが弾むのかもしれません。

恋愛を飛び越えて結婚を求める男女が増えてきたこともあって、最近では「婚活」がにわかに活気づいています。ブライダル総研の調査によると、婚活サービスを通して結婚にゴールインしたカップルが確かに増えてきています。

利用のきっかけは「一生独身の可能性に不安を感じるようになったとき」「自然な出会いでは難しいと思ったとき」が上位を占めます。趣味・仕事・勉強に力を注いできたものの、ふと人生の先に意識を向けたとき、そこに見える一生独身の風景に不安を感じ始めるのかもしれません。

婚活は結婚のための最後の手段ではなく、「面倒な恋愛」抜きの結婚への近道といった考え方も現れてきています。コミュニケーションが苦手な若者たちにとっては、便利な考え方かもしれません。

ただ、人とのリアルな触れあいの醍醐味を若い世代の皆さんには大いに味わっておいて欲しいと思います。人生は恋愛期間よりも結婚後の方がはるかに長く、生活は100%リアルな人間関係に突入します。共感もあれば誤解もある。携帯やPCに保存されている顔文字のデータ数ではとても表現しきれないリアルな家族の交わりを楽しむ生き方も、大切な選択肢の一つとして保存しておきたいものです。