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芸術と家庭・・・音楽編(2)

吉川鶴生

愛はヴァイオリンの調べに乗せて

弦楽器が奏でる秀麗な世界

弦楽合奏は、ヴァイオリン属の楽器、すなわち、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスで編成される楽曲の世界ですが、オーケストラほどではなく、12名から20数名の小編成が多く、なかには、大きい場合で60名程度まで膨らむものもあります。

まずは、「弦楽セレナード」の傑作を書いた作曲家と言えば、ロシアのチャイコフスキー※1やチェコのドヴォルザークそれにイギリスのエルガーなどが挙げられます。

メンデルスゾーンは、弱冠12歳から14歳にかけて「弦楽のための交響曲」※2を書き上げていますが、13曲を仕上げており、これがなかなかの出来栄えです。日曜日のたびごとに、まさに音楽を愛する一家として、家庭で音楽会を開いていたメンデルスゾーン家の若い息子が作曲した「弦楽のための交響曲」を家族全員で大いにエンジョイしていたことでしょう。

現代においては、ハンガリーのバルトークが「ディヴェルティメント」を、ロシアのストラヴィンスキーが「ミューズを率いるアポロ」を作曲していますが、いずれも評価の高い作品となっています。また、イギリスのブリテンは「シンプル・シンフォニー」※3を作曲していますが、これもなかなかよくできた演奏機会の多い名曲です。

弦楽器と言えば、一般的には、ヴァイオリン協奏曲に人気が集まっていると言えるでしょう。それに、4人編成の弦楽四重奏なども名曲揃いの世界です。まずは、イタリアのヴィヴァルディが作曲した「四季(春夏秋冬)」が、いつもどこかで耳に入ってくる人気の名曲と言えます。

スペインのサラサーテの作曲「ツィゴイネルワイゼン」※4は、ヴァイオリン技巧の見本市のような曲ですが、そのドラマチックな音響の世界に惹きこまれる人は少なくありません。サラサーテがスペインでも特異なバスク地方の人物というわけでもありませんが、熱情と悲哀の入り混じった緩急高低の音色を自在に展開する曲調に触れるならば、誰でも「ツィゴイネルワイゼン」を好きにならざるを得ません。

モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」※5は、おそらく知らないという人はなく、その軽快な乗りに聴き入っているうちに、こちらもウキウキした軽快な気分に誘われます。ベートーベンの「ロマンス」※6は、ゆったりと流れる美しい調べで、ヴァイオリンの音色を活かした至宝の作品です。

サラサーテ、ヴィヴァルディ、モーツァルト、ベートーベン、それぞれのヴァイオリンの調べが甲乙つけがたく、心に沁みてくるのを抑えることができないヴァイオリンの名曲たちです。中でも、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64※7チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35※8、そしてブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77※9ベートーベンのヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61※10は、四大ヴァイオリン協奏曲などと言われています。

手作りのヴァイオリンは人間の感情に近い

ヴァイオリン

ヴァイオリンという楽器の特性は、機械で大量生産することができないという点にあります。すなわち、いちいち、職人の手を煩わせなければできない手作り楽器であるということです。

これが何を意味するかというと、手作りの段階で職人の感情移入があり、そのような楽器を手に入れたヴァイオリニストの演奏においてまた奏者の感情移入があり、音の出し方も左手の指と、右手で握った弓と、本体の4本の弦の三位一体の絶妙の呼吸、すなわち、一体感が必要不可欠であるという点が、ヴァイオリン楽器の奏でる音楽の特質であると見ることができます。

このように、ヴァイオリンは製作と演奏の段階で、人間の感情移入の度合いが相当に大きいため、ヴァイオリンは人間の感情に非常に近い楽器であると言えるのです。

リストの「愛の夢」をピアノ演奏で聴いた場合と、ヴァイオリン演奏で聴いた場合、どちらも素晴らしいのですが、例えば、千住真理子さんのヴァイオリン演奏で「愛の夢」※11を聴くと、とても柔らかい感じがでています。五嶋みどりさんの「愛の挨拶」(エルガー)※12もそうです。ヴァイオリンはやはり人間の感情に近いのです。途切れのないヴァイオリンの音色は、夫婦、親子を途切れなく結んでいる愛の音色なのです。愛を紡ぐ人間家族の世界にヴァイオリンは最適であると結論してみたくなりました。

文中で紹介されている曲は以下のサイトから聴くことができます。
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  1. ピョートル・チャイコフスキー 弦楽セレナード ハ長調 作品48
    Tchaikovsky - Serenade for strings in C major, Op. 48 (1880)
     http://www.youtube.com/watch?v=6ZtPkCN2upw
  2. フェリックス・メンデルスゾーン 弦楽のための交響曲 第12番 ト短調 MWV.N 12
    メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第12番 ト短調 「フーガ」 / コンチェルト・ケルン 1994-1996年
     http://www.youtube.com/watch?v=cpS-eboFUMQ&t=40s
  3. ベンジャミン・ブリテン シンプル・シンフォニー 作品4
    Britten: Simple Symphony
     http://www.youtube.com/watch?v=jFeRels8AyY
  4. パブロ・デ・サラサーテ 『ツィゴイネルワイゼン』作品20
    Jascha Heifetz - Pablo de Sarasate, Zigeunerweisen Op.20
     http://www.youtube.com/watch?v=7jWmdzOxD9s
  5. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』ト長調 K.525
    W.A.Mozart Eine kleine Nachtmusik (Complete) Slovak Chamber Orchestra
     http://www.youtube.com/watch?v=o1FSN8_pp_o
  6. ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ロマンス第2番ヘ長調 Op.50
    Beethoven Romance No.2
     http://www.youtube.com/watch?v=93US1DTiNlA
  7. メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
    Mendelssohn, Violin Concerto In E Minor, Op 64, Perlman, Violin
     http://www.youtube.com/watch?v=5vJEqrPdses
  8. チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
    チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35 2of2
     http://www.youtube.com/watch?v=N3YKSVHWNpw
  9. ヨハネス・ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
    ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77 / ギドン・クレーメル(vn) ,レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1982年9月
     http://www.youtube.com/watch?v=-sg5EvkPJ5E
  10. ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
    ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61オイストラフ/クリュイタンス Beethoven Violin Concerto In D Major Op.61
     http://www.youtube.com/watch?v=v2zXKs-5s4g
  11. フランツ・リスト 『愛の夢』
    千住真理子 「愛の夢」
     http://www.youtube.com/watch?v=wfZQip4GzZM
  12. エドワード・エルガー 『愛の挨拶』
    五嶋みどり 「愛の挨拶 op.12」(エルガー)
     http://www.youtube.com/watch?v=A67eB3WWhYk