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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

感慨深い勝海舟の辞世「虎となり鼠となりて老いにけり」から探る老いの生き方

還暦が数え年61歳(満60歳)、古希が70歳、以下、喜寿77歳、傘寿80歳、米寿88歳、卒寿90歳。まだまだ続いて天寿250歳というのまであるが、ここまでにしておこう。

長寿を祝う節目の年齢は還暦だけが満年齢で数えるが、あとは数え年である。赤いちゃんちゃんこを着て祝う還暦は、生まれた年の干支に還ることから、そう呼ばれ満年齢で数える。古希は中国・唐時代の詩人、杜甫の詩に「人生70年古来稀なり」とあるのに由来する名称である。

長寿を祝うといっても、日本人の2016年の平均寿命は男性約81歳、女性約87歳である。ほかに日常生活を健康で普通に過ごせる期間を示す「健康寿命」というのがある。これだと2016年は男性約72歳、女性約75歳となる。いずれも厚労省が先月9日に発表した最新のデータである。

実は私も先月、古希を迎えたが、還暦のときもそうであったが今回も余りめでたいという気持ちにはならなかった。すでに古希は古来、稀ではなくなった。世界一の長寿国となった日本では、平均寿命が男女とも80歳を超え、健康寿命でも70歳超え。よく生かされ生きてきたという感謝の気持ちは忘れてはならないとしても、いまや還暦、古希はようやく人並みに年輪を重ねたということにすぎないのである。

あるデータによれば、日本人の寿命(男女平均)は縄文、弥生時代から室町時代までは30歳台前半、江戸時代が45歳、明治・大正時代も45歳前後で推移し、戦前の昭和10〜111年が48歳と戦前は50歳に届かなかった。それが私を含め団塊の世代の生まれた昭和22(1947)年ごろにようやく52歳となった。

私の中学、高校時代の公務員の定年は確か55歳であったが、いまや60歳定年が65歳に延び、健康年齢の70歳に届こうという。題名に興味を引かれるだけでまだ読んではいないが、佐藤愛子さんのエッセイ『九十歳。何がめでたい』(小学館)が共感を呼び話題になるほどの、そういう超高齢化時代に生きているのである。

西郷隆盛とともに幕末期に江戸無血開城を実現した勝海舟(1899年77歳で没)の辞世に「虎となり鼠となりて老いにけり」がある。誰であれ、辞世としてでなく古希まで迎えた人生に照らして、老いの生き方を探る上での言葉として、実に感慨深いものがあると思う。