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愛の知恵袋 116

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

死ぬまで元気で歩きたい

老後も元気で暮らしていくためには

私が自分の体力に限界を感じたのは50代の半ばでした。長い間、早朝から深夜まで仕事をしてきましたが、ある日、職場で階段を上れないほどに疲れてしまい、「このまま無理を続けると、突然倒れることになるぞ」という体の叫びを感じたのです。考えた末、自分から職場転換を願い出て、それ以後は自分の体調に合わせた仕事をするようにしました。

60歳の還暦を迎えた時は、「自分は、これから何年生きられるだろうか?」と考えさせられましたが、ただ生きているだけではなく、”元気”で活動したいと思いました。

日本は世界一の長寿国ですが、「寝たきり年数」では世界平均より3年以上長いようです。

男性:(平均寿命80.21歳)—(健康寿命71.19歳)=(寝たきり年数9.02年)

女性:(平均寿命86.61歳)—(健康寿命74.21歳)=(寝たきり年数12.4年)

(厚生労働省・健康日本21推進専門委員会審議会資料・2014年)

では、死ぬまで自分の足で歩き、介護の手を借りずに生活できる——そんな健康を手に入れるにはどうすればいいのか。そんなテーマのテレビ番組や本はたくさんありますが、その中でも、私には小林弘幸先生の見解がとても参考になりましたので、その健康法を紹介したいと思います。小林先生は、順天堂大学医学部教授。自律神経研究の第一人者であり、日本体育協会公認スポーツドクターとして、プロスポーツ選手やアーティスト、文化人への指導もしておられます。

足腰が弱ると、全てが危うくなる

実は、小林先生ご自身が50代になると体力・気力が低下し、急性咽頭蓋炎で死にそうになるほどの苦痛を経験され、残りの人生を笑顔で過ごすために”体づくり”を始めたのだそうです。

ジムに通う時間も気力もなかったので、まず、エレベーターをやめて階段を使い始めました。初めは2階へ上がるだけでも息が切れていましたが、1〜2週間続けると、楽に上れるようになったそうです。その後、どうしたら効率よく足腰を鍛え、健康になれるかを研究した末に、たどり着いたのが「スクワット」でした。

人が年をとった時、機能が低下して心身への影響が大きいのが、「筋力低下」「血流悪化」「自律神経のバランスの乱れ」の三つだそうです。この三大変化さえ制御できれば、天寿を全うするまで歩き、笑い、若々しく過ごせるというのです。

まず、「筋力低下」……誌面の関係で詳細な説明は省きますが、下半身の筋力が低下すると、動悸・息切れ、冷え、むくみ、心臓病、糖尿病、骨粗しょう症へのリスクが増します。

次に、「血流悪化」……加齢によって毛細血管が減少すると、末端の細胞に酸素や栄養素を届けられなくなって、あらゆる臓器の機能低下や病気を招きます。

そして、「自律神経の乱れ」……自律神経は全ての血管に沿って走っている神経で、内臓器官の全て、特に血流をコントロールしている神経です。体温調整や胃腸運動、免疫などもつかさどっています。交感神経と副交感神経のバランスが崩れて血流が悪くなると、免疫力低下、糖尿病、高血圧、倦怠感、頭痛、肩こり、動悸、不整脈、不眠、便秘、イライラ、集中力の欠如などの不調をもたらします。従って、自律神経のバランスが整えば、体、脳、心の全てが調子よくなります(高速のスクワットやジョギングなどの激しい運動は、筋力強化にはなりますが、交感神経が過剰に働き自律神経のバランスを乱すので、別のリスクを招くそうです)。

これらの三つの問題を一挙に解決できるのが、小林式の「スクワット」だというのです。

小林先生の勧める上手なスクワットのしかた

  1. 「股関節ゆるめ」(1〜3週目):イスの背やテーブルをつかみ両足は肩幅で立つ。背筋を伸ばし息を吐きながら4秒かけてゆっくり腰を落とす。ひざは90度まで。息を吸いながら4秒かけてゆっくりひざを伸ばす。1週目は朝晩各5回、2週目各10回、3週目各20回。
  2. 「背筋のばし」(4週目):壁を背にして立ち、両足は肩幅に。両手は胸の前でクロス。壁を支えにして背筋を伸ばし、息を吐きながら腰を落とし、息を吸いながら戻す。朝晩各20回。
  3. 「太ももならし」(5週目):椅子の背やテーブルをつかみ、両足を肩幅に。太ももに意識を集中して、息を吐きながら腰を落とし、息を吸いながらゆっくり膝を伸ばす。朝晩各20回。
  4. 「全身スクワット」(6週以降):やり方は1と同じだが、両手を頭の後ろに組む。意識は太ももに集中して、しっかり呼吸をしながら全身に負荷をかけることで、筋力・血行を高める。
  5. 「腸活スクワット」(随時):便秘や肌荒れ、疲れなどが気になる人は、体をひねることで腸を刺激する。上半身を右にひねりながら腰を下ろし、もとに戻しながら膝を伸ばす。次は左にひねりながら腰を下ろし、もとに戻しながら膝を伸ばす。これを朝晩各10セット。

小林先生は、今では医師会の階段を7階まで、自分の足で難なく上っているそうです。

私が小林先生の勧めるスクワットをやろうと思ったのは、第1に、「これなら自分にもできそうだ」と思えたこと。第2に、単なる筋力アップではなく、呼吸法と合わせた自律神経調整スクワットであったことです。もし、関心がありましたら、皆様も始めてみてください。


(参考文献:小林弘幸著「死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい」幻冬舎)