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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

今年も交通死者の戦後最少記録更新のカギを握る高齢運転者の事故防止

昨年は全国の交通事故による死者数が3694人を記録したが、この数字は画期的な数字である。前年との比較では210人減少させたが、交通死者が戦後最も少なかった昭和24(1949)年の3790人を実に68年ぶりに下回った。「第1次交通戦争」という言葉が生まれ、死者数が最も多かった昭和45(1970)年の5分の1近くにまで減らしたのである。

事故で泣く家族や関係者が減ったことは、それだけ不幸が世の中で少なくなったことを意味する。すでに保険会社が発表しているように、車を運転する人は損害保険料が年間平均8%ほど引き下げられる恩恵に与る。それに何よりも、走っている車自体がまばらな戦後まもない頃と、そのあと高速道路ができ、道路が渋滞するほど車が爆発的に増加した今日との変化を考えれば、この数字を画期的な成果と称えてもいい。

さて、今年はどうか。今年上半期(1月〜6月)の交通死者は1603人で、昨年上半期より、さらに72人の減少を記録した。下半期(7月〜12月)次第では戦後最少記録をさらに更新する可能性があるのだ。

こうした成果は、相次ぐ道路交通法の改正で違反運転者への厳罰化が事故防止効果を生んだことや運転者の意識やマナー向上などによることが大きかろう。その一方で、なお高止まりが続いている高齢運転者(75歳以上)の事故防止に課題を残している。

昨年の高齢運転者による死亡事故は418件で、運転免許を保有している10万人あたりの件数では7.7件に上る。この数字は75歳未満による事故件数と比べると2倍以上の高さである。しかも高齢運転者は2021年には613万人に達すると推計されている。

高齢者の死亡事故件数の高さについて警察庁などは「認知機能の低下が死亡事故の発生に影響を及ぼしていると推察される」とみている。

そこで、昨年3月から施行された改正道路交通法では高齢運転者の認知症対策が強化された。また高齢者の運転免許証の自主返納の促進も進んでいる。75歳以上の自主返納が一昨年の16万人から昨年は25万人と急増したのは、高齢者による衝撃的な死亡事故が続いたことも大きい。事故報道を機に、自身の反射神経の衰えなどからくる年齢相応のリスクと向き合って考える人が増えたからであろう。今月21日から月末まで『秋の交通安全運動期間』である。