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福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (3)

社会福祉士・精神保健福祉士 高砂 新

道は拓かれる

私は19年間、医療福祉の仕事に従事して知的障害者福祉や精神障害者福祉に携わってきました。現在は精神科病院が運営する就労支援事業所に勤務しています。本稿では精神障害者福祉について考えてみました。

まず「精神障害」と「精神疾患」の概念についてですが、後者は、いわゆる統合失調症、うつ病、アルコールや薬物による依存症などの医学的概念であり、前者はこのような精神疾患を有することで生活上に障害をもつという、福祉的概念になります。ですから精神疾患を有している人でも、必ずしも精神障がい者ではない場合もあります。

さて、精神障害者福祉は、障害者福祉の中でも他の身体障害や知的障害とは別の変遷を辿ってきました。それは前述した通り、医学的治療の対象として考えられてきて、その症状はいつか改善するもの、障害として固定するものではないとされ、障がい者として、福祉の対象として考えられなかったという経緯がありました。それが1995年、精神保健福祉法の改正に伴って、ようやく福祉の対象として法整備されることになりました。

精神障害の場合、その疾病の症状が原因で人間関係が上手く築けない、生活能力が低い、職場などの社会参加ができないことなどが考えられます。精神障がい者がこれらの障害を克服しようとする場合、医療と福祉の両面からのアプローチが必要になってきます。

医療面から考えると、疾病の症状などは、通院や服薬などによって安定しているほうが望ましいでしょう。安定していたほうが、生活上困っていることに挑戦できる余裕があるからです。治療期間中に症状が落ち着いたからといって、通院や服薬を独自の判断で中断する人が見受けられます。数日はその影響は受けませんが、その後症状が再発して入院が必要になったりすることも起こります。通院や服薬のことなど、必ず主治医とよく相談することが大切です。

福祉面から考えてみると、例えば、入院されていた人が、症状が落ち着き退院して普通の生活に戻ったとしても、数か月もしないで症状が悪化し、再入院になる場合があります。何故でしょうか。入院している時は、看護師が定期的に服薬できるよう管理してくれますし、治療に専念しているので生活上の煩わしいことはあまり考えなくて済みます。そのためストレスが少ないので症状が改善するのですが、そこで、すぐ退院してまた全てのことを自分で行い、ストレスの多い生活に戻ると、症状が再び悪化してしまう場合があるのです。

今日、生活上の困難をもつ精神障がい者をサポートしてくれる医療福祉サービスは多くあります。人間関係が苦手な人、生活能力が低下した人、仕事に就きたい人などに対して、その人の年齢や症状、障害の程度に応じて、目標や計画を立ててサポートをしてくれます。ですから、現存の医療福祉サービスを知って最大限に利用することによって、個人差はありますが、必ずや道は拓かれるものと思っています。