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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

北アルプスを眺めJR東最西端の駅にも立ち秋を満喫した大糸線の旅

この秋、念願かなってJR大糸線の旅を楽しんだ。「青春18キップ」を駆使する1日旅のお蔭で、関東・甲信越の大方の路線は回っているが、その数少ない未踏路線の一つ大糸線は、長野県の松本駅と南小谷駅間を34駅で結ぶ。

当初の目当ては終点の南小谷だった。ここ数年、18キップの季節になると必ず2人で旅をするジャーナリスト仲間の企画である。2人はいつもリュックにタオルを忍ばせる。共通する旅の第1目的は温泉だからである。

「南小谷に温泉あるの?」。首を振った相棒に「じゃあ、何かあるの?」と畳みかける。この春の週刊誌の桜特集グラビアで、雪の白馬をバックにした山桜の美しい風景写真が心に残った。桜でも雪の季節でもないけれど、ここの秋の風景を見たいと思ったからだと言う。それも面白いと思った私は、世紀の大事業だった黒部ダム建設を支えた町である信濃大町にも興味があった。北アルプスへの入り口である信濃大町駅は松本から20駅目で、そこから3000メートル級の山々も眺めたかった。

旅の出発は中央線高尾駅を朝7時7分発の甲府行きから。未明(9月6日・木)に北海道胆振地方を襲った震度7の地震も知らないまま、11時19分に松本から南小谷行きに乗った。途中、ネットガイドで信濃大町から2駅(松本から22駅)目の信濃木崎駅から徒歩10分で温泉(ゆーぷる木崎湖)があることが分かり、心変わりして下車したのが12時半ごろ。温泉施設にはガイドどおり着いたが生憎、この日は木曜の定休日。施設の人に、10分ほど行けば信濃大町温泉郷の「薬師の湯」が利用できると教えられた。「途中、コンビニを右に曲がってすぐ」とも。

ところが、一面白い花のそば畑の中をダンプカーが行き交う道を30分ほど歩いても目印のコンビニが見当たらない。50分近く歩いてたどりついたコンビニで「あと車で5分ほど」だと薬師の湯の割引券をもらって、車と徒歩時間の勘違いに気がついた。トホホホッ。

帰り時間を計算して温泉をあきらめた。木崎駅に戻り、帰り電車に乗り換えられる駅まで乗る。窓外近くにある木崎、中網、青木湖の「仁科三湖」を眺め、5駅先で乗り換えた南神城駅(標高約770メートルの無人駅)には「JR東日本最西端の駅」の標識が立っていた。

結局、新宿着が23時6分。当てが外れた旅でも悪くなかった。3層に波うつ北アルプスの奥行きある山容と仁科3湖の眺め、白いそば畑と赤とんぼに秋の空気を満喫し、最西端の駅ホームにも立った。途中、乗り継ぎの上諏訪駅では足湯にも浸れたのだから。