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芸術と家庭・・・音学編(6)

吉川鶴生

グループサウンズは「愛のいざないの歌」

青春のエピタフ(墓碑銘)

「グループサウンズ」という音楽ジャンルをご存じでしょうか。その存在期間は、1966年末から、67年、68年、69年までの正味3年という短い命でした。この時代に青春を謳歌した若者たちは、いわゆる、団塊の世代と呼ばれる人々です。現在では70歳前後のいいおじいさんおばあさんになっていらっしゃるかもしれません。もうお孫さんたちを何人か抱えていらっしゃる方も少なくないでしょう。

この3年間という短命性にもかかわらず、多くの人々(団塊の世代でない人々まで含めて)に口ずさまれ愛されていますから、影響力のあるグループや曲が多く存在するということです。

ザ・タイガース、ザ・スパイダース、ブルー・コメッツ、ザ・サベージ、ザ・テンプターズ、ザ・キングトーンズなど、すぐに思い浮かべることのできる数々のグループサウンズがいます。

グループ名を見て分かるように、ビートルズをはじめとする当時の欧米の音楽グループの影響を直接間接に受けた音楽と言ってよいでしょう。基本的に、若い男女の仄(ほの)かな淡い初恋を切なく歌い上げる曲が多いのは言うまでもありませんが、中には家族愛の絆を歌い上げるものもあり、「グループサウンズは意外と家族愛!」などというキャッチフレーズが脳裏をかすめます。

「家へ帰ろう」

ザ・キングトーンズの「家(うち)へ帰ろう」※1、この曲を聴くと、ゆるやかに美しく流れるそのメロディーの中で、家(広義には、ふるさと、故郷)への郷愁が存分に歌い上げられているのを感じることができます。曲の導入に、ドボルザークの「新世界より」のメロディーを使って雰囲気を盛り上げていますが、やはり家に帰りたいその理由は「母さんの笑顔」であり、「やさしい声」であるというあたりが、帰郷の思いには母親の愛のぬくもりがあることを物語っています。

そして、家の周りの自然、すなわち、「あの丘」、「森の小径」を忘れることができないと歌っていますから、育った場所の自然がいかに人々の心に沁み込んでいるかということです。「家に帰る」という気持ちの中にあるもの、それは故郷の人々(とくに家族)、そして故郷の自然(山や川)です。この二つ、故郷の人々と自然は生きている限り忘れることができないものです。

ザ・テンプターズの「おかあさん」※2は、「オーママ ママ」の繰り返しが基調となって、しんみりと歌われていますが、母との絆を心にしっかり抱いて生きる青年の姿が感じられます。「いい子でいてね」という単純な、しかし、いろいろな思いの籠った母の言葉が青年の心の中にいつまでも焼き付いて離れません。

どのような家庭環境の中でどのように育ったのかわかりませんが、この青年にとってママへの思いは絶対です。そして「いい子でいてね」というママの言葉がいつも心に湧き上がるのです。こうして聴いてみると、「グループサウンズは意外と家族愛!」と言った意味がお分かりいただけると思います。

男女の愛の出会いが人生を築く原点に

どんなに人類の問題を難しく語ってみても、人生とは一組の男女の出会いから始まるという定義を打ち破ることはできません。若い男女の出会い、そして結婚、そして家庭の営み、単純に言ってしまえば、それだけのことです。

ザ・タイガースの「花の首飾り」※3の美しい曲調に聞き入ったことがある人は多いかもしれません。青春の仄かな愛を歌った名曲の一つです。その愛が実を結んで結婚にまで至るのか、あるいはそうではないのか、不安定な青春時代の愛の姿は、愛の天使に導かれるのか、悪戯好きな誘惑の天使が破局をもたらすのか、悲しみと喜びが絶えず交錯します。

ザ・タイガースと同様に、人気の高かったザ・スパイダースの「いつまでも どこまでも」※4は愛する二人が支えあって生きていこうと語らう歌です。

ブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」※5は、軽快な曲調に似合わず、「森」「湖」「ブルー・シャトウ(青い城)」という言葉が織りなす幻想的な場所で乙女が待っているというのですから、若い二人の愛はかなり神秘性を帯びています。

ザ・サベージの「この手のひらに愛を」※6は、手のひらに愛を載せて恋人に捧げるという内容ですが、ゆったりとして聴きやすい思いの籠った歌です。これらのグループサウンズの歌声は、若い男女の出会いと結婚、家庭という人生コースへの導入を担当する「愛のいざないの歌」と言ってよいでしょう。1960年代末はそういう歌が大流行した時代です。

文中で紹介されている曲は以下のサイトから聴くことができます。
 (クリックすると、別ウインドウまたはタブで外部サイトが開きます。)

  1. ザ・キングトーンズ 家へ帰ろう
    http://www.youtube.com/watch?v=nIk8BZ2St08
  2. ザ・テンプターズ おかあさん
    http://www.youtube.com/watch?v=PjGKUVCf1zY
  3. ザ・タイガース 花の首飾り
    http://www.youtube.com/watch?v=Khgh1Fb5E4Y
  4. ザ・スパイダース いつまでもどこまでも
    http://www.youtube.com/watch?v=Ni8o7LerYSw
  5. ブルー・コメッツ ブルー・シャトウ
    http://www.youtube.com/watch?v=LiUfElXZ5LI
  6. ザ・サベージ この手のひらに愛を
    http://www.youtube.com/watch?v=jME3CopaiFY