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福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (4)

介護福祉士 小宮 央

最期の入浴は、薔薇風呂

私は特別養護老人ホームで働き、介護福祉士になってから5年が経ちます。最近、入居者の看取りに立ち会いました

Kさんは、老衰で体力も落ち、食欲も低下し、旅立つ前に何かできないか? 最後にどのような支援ができるのか? 職員間で話し合いました。介護職は毎日、排泄・食事・入浴などのケアをさせて頂いています。食事が徐々に摂れなくなってきているので、せめて清潔を保ち、気持ちよさを感じてもらいたいという結論に至りました。そして、ご家族にお元気なころの様子をお聞きして、最後に何を支援できるのか、ご家族とも話し合いました。

関西出身で、お好み焼き、うどんが好きだったこと。本人から、口から食べられなくなったら終わりだ! と娘さんに話していたこと。お風呂が好きだったこと。お花を見ると、とても喜んでいたことなど、娘さんからお話を伺いました。介護職員一同は、できる限り笑顔が見たい、元気を出して欲しいという気持ちでいっぱいになりました。

夜中でも、ご本人が、「うどんが食べたい」と言われれば、冷凍うどんを温めて食べて頂きました。また、娘さんとよく行っていたというホームセンターの園芸コーナーへお連れして花を観て頂きました。特に入浴支援は、ご本人が好きだったこともあり、最後まで続けました。

Kさんが、「ありがとう。このことは、一生忘れへん」と言われるので、「まだまだ、元気があるから大丈夫!」と職員は返答しました。いよいよ最期の時を迎え、再度、ご家族と話し合いの場が持たれました。「やっぱりお風呂が、好きだから」がキーワードとなり、人生最後の入浴は「バラ風呂」に入れて差し上げることになりました。

ある日、娘さんは街中の花屋さんを回って、バラを40本集めて来られました。そのご家族の熱い思いに動かされ、その日、予定より早めに入浴を実施することになりました。

湯船にバラを浮かべ、職員(介護・看護)とご家族が、薔薇風呂に入っているKさんを囲みました。ご本人は、安堵した表情で、大変喜んで下さいました。

3日後にKさんは息を引き取られました。ご家族から「本当にここまでしていただき、母は幸せです」と言っていただきました。最期の穏やかな顔を拝見し、お見送りすることができ、介護職として生きる力が与えられました。

施設での看取りケアとは、ご家族と介護士、看護師など多職種が一つになって取り組むケアです。話し合いを何回も持ち、最後まで支援できることを、これからも続けていこうと思います。