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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

免疫機能について掘り下げた理解と敬意で称え、本庶佑氏のノーベル賞受賞を喜びたい

ひと頃「免疫力を高め、健康にいい」ということで、納豆やブロッコリー、オクラ、マンゴなどがもてはやされたことがあった。同じ理由で、効果ありとの触れ込みで健康食品を勧められたこともあるが、免疫について理解の乏しい私にはよく分からなかった。

それが今年のノーベル生理学医学賞の受賞者に京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)氏(76)が選ばれたことで、理解が大いに進んだのである。

もう日本人のノーベル賞受賞に一喜一憂、あるいは大喜びする時代は、そろそろ卒業すべきかもしれない。それほど日本の候補者の層は厚くなっていて、今や受賞そのものが珍しくなくなってきた。とは言っても、今年も12月の授賞式まで、やっぱり栄誉の美酒にともに酔いたい。さらに、受賞の功績について掘り下げた理解と心からの敬意を払って称え、次元の高い喜びを共有したいものだ。

人の体にはもともと体内に侵入した細菌やウイルスなど外敵の病原体を攻撃して身を守る免疫の仕組みが備わっている。ところが、自身の細胞が変異したがんに対してはこの仕組みが有効に働かない。本庶氏は四半世紀をかけた研究で、その原因が免疫機能の細胞にブレーキをかける分子「PD-1」があり、がん細胞がこれに作用してブレーキをかけさせて攻撃阻止していることを突き止めた。

そこで、このブレーキをを外して免疫機能ががん細胞を有効に攻撃できるようにする新薬オプジーボが開発された。自身の免疫機能ががんを攻撃して治療するという斬新なメカニズムによる画期的な「がん免疫療法」に道を開いた意義は限りなく大きい。自力による治療原理からして、副作用が少ないことは素人でも分かろう。

また免疫療法は以前から注目されてきたが、その割には効果がはっきりしてこなかったので下火になりかかっていた。それも本庶さんらの研究から、ブレーキ分子の存在が分かり、闇雲に免疫力だけを高めてもがん治療とは結び付かないことも分かったのである。

これまで、がん治療は外科手術、放射線療法、化学療法(抗ガン剤など)の3本柱だったが、これに免疫療法が第4の柱として加わり、患者の治療選択肢も広がる。オプジーボは今のところ皮膚ガンや肺ガンなど7種類のがん治療などに目覚ましい成果が認められているが、治験が進むと適用がんの種類がさらに広がっていく可能性が高い。まだ薬価が大変な高額であることなど課題も少なくないが、がんが脅威でなくなる日も近いのである。