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愛の知恵袋 124

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

人生三分の計

定年後の”晴耕雨読”の夢が無残にも散った…

定年退職したある男性から相談を受けました。

「私は定年を迎えるまでは、どんなことでも我慢して仕事をやり遂げよう。そして、退職したら田舎に引っ越して、晴れた日は畑で耕し、雨の日は好きな本を読む…そんな生活をしたいと思っていたんです。そこで、かねてから準備していた計画を妻に話したんです。そしたら、喜んでくれるどころか、『とんでもない!』と真っ向から反対されたんです」

「奥さんは何とおっしゃったんですか?」

「自分は今まで子供のためと思って、家事・育児の手伝いもしないあなたの身勝手にも我慢をしながら、自分のしたいこともしないできた。私にだってやりたいことがたくさんある。そんな田舎に引きこもって、毎日あなたの世話だけをする生活なんて、もううんざりです!…と言うんです」

結局、お互い言い争いになってしまい、妻は荷物をもって家を出て行ってしまったということでした。このご夫婦は、まだ離婚にまでは至っていませんが、世の中には、このような夫婦の気持ちのすれ違いで、結婚生活が破たんするケースも少なくありません。

熟年離婚の増加と離婚の理由

離婚する夫婦が多いことはすでによく知られていることですが、特に、同居期間20年以上の熟年離婚の比率が増えています(1947年と比べると約6倍)。

そして、今は離婚を申し出るのは、夫からよりも妻からのほうがはるかに多いのです。

では、離婚の理由は何でしょうか? まず、司法統計(2013年)の数字から見ますと、夫からの離婚申し立ての理由は、①性格の不一致、②精神的な虐待、③異性関係、④家族親族との折り合い、⑤性的不調和、⑥妻の浪費、⑦同居に応じない、⑧暴力をふるう、⑨家庭を捨てて顧みない、⑩病気。

妻からの離婚申し立ての理由は、①性格の不一致、②生活費を渡さない、③精神的虐待、④暴力をふるう、⑤異性関係、⑥夫の浪費、⑦家庭を捨てて顧みない、⑧性的不調和、⑨家族親族との折り合い、⑩酒を飲み過ぎる……ということになります。

もう一つ、雑誌「AERA」(2010年11月22日号)の特集アンケート調査によると、離婚した夫婦の「離婚を考えた理由」の上位は、夫側からは、①生活のすれ違い、②愛情が冷めた、③性生活の不満…があげられています。妻側からは、①金銭問題、②愛情が冷めた、③相手の親…があげられています。

男性側の不満が情緒的・感情的なものであるのに対して、女性側の不満はズバリ、金銭的な事が第一に出てきています。男と女のこの感覚の違いもよく分かっておかないと、相手を納得させ満足させることはできないということになります。

夫にも必要な「人生三分の計」

『超ソロ社会』の著者で博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダーの荒川和久氏は、今や、夫も妻と同様にしっかりした「人生三分の計」が必要であるというのです。

「人生三分の計」というのは、三国志の諸葛孔明が劉備に提案した「天下三分の計」になぞらえて使われるようになった言葉だそうですが、要するに、人生を大きく「成長期」「貢献期」「晩年期」という三つのステージに分けて、それぞれの期間を、いかに確かな目標をもって悔いのない充実した人生にするかという心構えのことです。

平均寿命が90歳に近づき、初婚平均年齢が30歳という今日では、人生を独身時代の30年、結婚・子育ての30年、定年後の30年と3分割して考えることができます。

日本の女性たちは、既に、かなり前から人生プランを3期間に分けて考えています。

  1. 幼少期から学生時代を経て結婚するまでの独身時代。
  2. 結婚して夫の世話と子供の出産・育児・自立までの養育の期間。
  3. 働く夫の世話と育児から解放された余生の自由な期間。

今は共働きが多くなっているので、女性にとって第2期間の負担はより大変でしょう。やりたいことが一杯ある女性たちにとって、第三の人生がいかに貴重であるかが理解できると思います。しかし、夫たちのほうで、この心理をよく理解できていないと、冒頭のご夫婦のような悲劇が起こってしまいます。

荒川氏は、今や夫たちにこそ、この「人生三分の計」が必要だと言っています。結婚までの30年、仕事を全うするまでの30年、退職以後の20〜30年。特に、第3期間である退職後は、生まれ変わるような覚悟で、相当意識を変えて暮らさないと、妻の失望や不評を買うことになります。

第2期間の男は、「仕事」「収入」「肩書」のゆえに、妻から頼りとされ尊敬されてきたかもしれませんが、第3の期間には、その3つは無くなっていきます。自分からその3つをとった時に何が残るのか……。その3つを全部取り去ってもなお、妻と子供達から喜ばれ尊敬される私に生まれ変わらないといけないのです。そうしないと、扱いにくいただの無職のおじいさんとなって、周囲の顰蹙(ひんしゅく)をかうことになるかもしれません。

最後にもう一つ考慮すべきことがあります。長寿社会では、死別や離別で一人暮らしになることが多いので、家事・雑事もできるだけ身につけておくことが賢明かと思います。


(参考文献:『超ソロ社会』荒川和久著・PHP新書)