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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

日本最古の歌集「万葉集」を典拠に始まる「令和」の御代はいい時代に

令和(れいわ)の時代が緑麗しい今月から始まる。今年はいつもの年の元日、そして年度代わりの4月1日、これに皇太子殿下の即位による新元号「令和」の御代となる5月が加わり年3回の新年を迎える。

先月1日に新元号が決まるのを、わくわく膨らむ期待感の中で固唾(かたず)をのんで待った人も多かったに違いない。今回は事前に、新聞やテレビ、インターネットなどに新元号の予想や関連記事があふれ、盛んな論議の中で元号への親しみも増した。決定手続きでは懇談会メンバーに、作家の林真理子さんら2人の女性識者、ノーベル賞受賞者の山中伸弥京大教授らが入ったことなどが関心を高め、新時代を感じさせる論議を呼んだのである。

テレビ中継が映す「令和」発表を受けて盛り上がる人々の歓声に、日本の明るい未来が予感された。特に若い人たちに「言葉の響きがいい」と音感から好感を持つ人が多かったのが印象的だった。その後の世論調査からも、人々の受け止めは概ね歓迎、かつ前向きで、展望は明るく開けた感じなのがいい。

元号は645年の「大化」以降、連綿と続いて今回が248番目となるが、今の元号法の成立は昭和54(1979)年から。これによる改元は平成に続き今回が2回目とまだ新しいが、既に日本の文化としてしっかり根付いたと言っていいのでは。

さて、「令和」の典拠は「万葉集」。これまで全て中国古典(漢籍)だった日本の元号の典拠が、日本の古典(国書)となるのは初めて。それだけに、ここに意外性と斬新さ、創造的な響きが感じられるのである。

梅の花

引用したのは万葉集の「梅花(うめのはな)」の歌の序にある〈初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き…〉から。現存する日本最古の歌集である万葉集(奈良時代)は、天皇や皇族、貴族から防人(さきもり)、農民まで、実に幅広い階層の人々の和歌を納めている。古典は宮廷文学の色合いが強いものが多い中で、万葉集は身分の高低を超えて和歌を集めた国民的文学というべきもので、いわば今日まで和歌を詠みつないできた日本人の精神文化の起点(ルーツ)である。そして、時代ごとの精神文化を反映させつつも一方で、常に新しい表現を生み出してきた。近年では俵万智さんの口語歌集『サラダ記念日』(1987年)もそのひとつだ。万葉集から令和の時代が始まるのは意義深い。いい時代となってほしい。