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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

川の流れに人生を重ね、川好きの人に、河川環境の保全・再生を呼び掛ける河川愛護月間

地上では、熱気を運んでくる夏の風に当てられて、ふうふう言い流れる汗を拭い熱中症の心配をしながら過ごす小暑、大暑の7月である。

天上では、晴れれば降ってくるように夜空を飾る星座群の中に、きめ細かな星群が川の流れのように輝くところがある。天の川をはさむ織り姫(こと座のベガ)とひこ星(わし座のアルタイル)の逢瀬を彩る七夕伝説がひととき、美しく涼やかに広がるロマンの世界に憩わせてくれる。

だが、昨年の七夕を挟んだ3日間は美しい夜空が眺められなかっただけではない。「数十年に一度」という大雨特別警報下の記録的豪雨が岡山県など西日本の広い地域を襲い、豪雨災害としては平成最悪となる死者100人を超える悪夢となった。被災地は土砂崩れや河川の氾濫、堤防の決壊などで川と道路、田畑が区別のつかない一面ドロ沼と化した。

令和の今年も、こういうシーズンを迎えようとしている。時に、川はこうした牙をむくが、それでも伊勢湾台風で氾濫した長良川(岐阜県)のほとりで育った私を含めて川好き、川に親しみを持つ人は少なくなかろう。

川の写真

『狐猿』(角川文庫)などに収録されている井上靖の短編に『川の話』がある。川好きの〈私〉が問わず語りのように、その理由を語る。〈多少人より多く川の表情やその長い胴体に関心を持っているということ〉。そして〈大きい川、美しい川、鋭い川、若い感じがする川、立派な川、どの川にも独特の表情がある〉と。

また〈どんな川でも、みな海へ出ようとする一途さを持っているからでしょう〉。そして〈人間でも川のような一途な流れをその経歴に持っている人は立派ですな〉とも語る。源流から河口までの一筋の流れは、人の成長の道筋のようでもある。

美空ひばりの代表曲の一つ「川の流れのように」(詞・秋元康、曲・見岳章)も、川の流れをそれぞれの人生に重ねたもので、心にしみいる響きがある。

七夕の7日(川の日)を含む7月は、河川愛護月間(国土交通省など)である。身近な自然空間である河川流域全体の良好な環境の保全・再生への取り組みの推進を呼び掛けている。標語は「せせらぎに ぼくも魚も すきとおる」である。