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福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (13)

精神科看護師 小花喜美子

精神疾患の、より一層の原因解明を願う

私は精神科開放病棟の看護師をしています。

精神疾患への対応は、他の病気と同じように早期発見、早期治療が重要です。発症は、10歳代から40歳代ごろまでとされ、20歳代での発症が多く、現在は、高学歴者や有名企業の社員の罹患も多いです。

さて、精神病を原因から分類すると、次のように大きく三つに分けられます。

第1に、器質性、あるいは症状性の精神病というもので、脳や身体に病気があったことが原因で起こるものです。

第2に、心因性の精神病で、心理的に大きなダメージを受けたことが原因で起こるものです。

第3は、内因性の精神病で、本人の内側からの何らかの理由で起こる原因不明のものです。代表的なものとしては、統合失調症と躁鬱病(双極性障害)があります。

統合失調症の中核的症状には、幻覚と妄想があります。そして、幻覚の多くは、「バカ」、「死ね」などのように、その本人に精神的ダメージを与えるような内容を含んでいるのです。

幻覚や妄想を呈するようになると、その人は精神的苦痛を感じ、結果として、常識では考えられない言動をします。

このように行動化した場合は、周囲が異常として捉えることができます。

しかし、行動化せずに内面化して本人が訴えない状態の場合は、周囲の人は幻覚、妄想の存在を知ることができません。その結果、病気の発見が遅れる場合があります。

ところで、WHO(世界保健機関)は、「健康」の定義を「身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と1948年に定義しています。

1999年の総会では、定義の改正案が討議されました。その内容は、「身体的、精神的、霊的、社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」というものでした(原文: Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)。この時、定義の改正は見送られたのですが、大きな論議を巻き起こしたことは事実でした。

さて、わが国では、死の恐怖や死生観の悩みに対応できる専門家が医療現場には居なかったのですが、2011年3月の東日本大震災後、人々の心のケアのため、宮城県宗教法人連絡協議会により「心の相談室」が開設され、主要な大学で、臨床宗教師を養成する取り組みが行われるようになったということは、とても希望に感じる内容です。

元来、宗教と科学は、それぞれ人間の内的知、外的知を求めて発展してきたものであるなら、医療の現場でも、より一層、内外の無知を克服して、人間の内外の健康と幸福のために、大きく進歩してほしいものです。

他の疾患でも未だに原因不明の病気は多いですが、目に見えない精神疾患の原因解明も、早く進むよう心から願うものです。