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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 167

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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

うちの夫はネット依存症?

パソコンオタクの夫に不満

30~40代の女性たち数人と懇談した時に出てきた話です。

最初に口を開いたのは、結婚して5年ほどになるA子さんでした。「夫との会話や交流がほとんどできないのが悩みです」と言います。

「どうしてできないんですか?」と聞くと、「夫はいつもパソコンばかりで、まともに話ができないんです」と言います。

夫は家に帰るとすぐにパソコンに向かう。夕食で声をかけてもなかなか出てこない。やっと来て食事をしても、妻や子供との会話は義務的で、食事がすむとスーッとまた別室へ消える。そしてまた寝るまでパソコン。最初の頃は、「仕事の関係だ…」と言うので我慢していたが、どうもそうではなさそうだ。妻が話しかけても目はパソコン。時々、妻が怒って文句を言うと、少しの間は気を付けてくれるが、3日もすればまた同じ。

「優しくていい人だったのに、今はロボットと一緒にいるようです…」と言う。

夫はスマホ中毒だという妻

すると、結婚して7年というB子さんが言います。「よくわかります! うちの場合はスマホなんですよ。夫は四六時中スマホを見ています」

用事があって話しかけても上の空。子どもが話しかけても同じで、本気で相手にしてくれないので寂しそう。夜中までゲームをしていることもある。

「ある時、怒り心頭で、『私とスマホとどっちが大事なの?』と言ったら、『う~ん…、どっちも大事だろ!』なんて言うんですから、がっかりしました」

スマホ依存は独身の男性・女性にも多くみられるようですが、いずれにせよ「ネット依存症」は、時には家族の情的関係を崩壊に導きます。

無機質な端末機器だけと向き合っていると不感症になったり、情緒不安定になることがあります。また、メタボや不眠症などで健康を損なう人もいます。

ネット社会の光と影

小中学生のスマホやゲーム依存の問題と対策は以前に取り上げましたが、今では大人もこの課題に直面しています。米国、韓国、中国等ではすでに社会問題になっていますが、日本でも同様です。厚生労働省は2008年時点で、すでに「推計271万人の成人がインターネット依存傾向にある」と発表しています。

現代社会のIT化の速度はすさまじく、仕事も買い物も遊びもネット情報に頼る時代です。スマホやタブレットは片時も手放せない必需品になっています。実際、これらの端末を使いこなせれば非常に便利なのです。

ただ、問題があります。端末機能は急速に進化し、ネット情報の幅も奥行きも広がるばかりで、入り込んだら底なしの世界ですから、依存症になることがあるのです。

人はどんなに多くの情報に接し、バーチャル世界で疑似体験に浸っても、本当の意味で心が満たされるということは滅多にありません。

スイッチの切り替えをしよう!

今後は社会全般がIT化されていき、インターネット端末が必須になる時代ですから、それらに精通し使いこなせる技術を身につけることは必要だと思います。

しかし、一方でスマホやパソコンばかりを相手にしていると、大切な家族や友達との“生の交流”が消失していくのも事実です。

従って、私達は「生身(なまみ)チャンネル」と「端末チャンネル」を上手に切り替える「ガイドライン」を自分の中で決めておくことが大切です。

例えば、以下のような「個人端末利用ルール」を家族と相談して決めましょう。

  1. 通勤電車の中では……利用可
  2. 仕事中や運転中は……利用不可
  3. 昼食時や休憩時間は……利用可
  4. 時々室外に出て、体を動かす。
  5. 自宅で家族から話しかけられたら……端末一時停止
  6. 夕食は必ず家族と対面し、話しながら食べる……(緊急以外は利用不可)
  7. 月に一度は家族や友人と一緒に野外に出かけ、自然と触れ合う。

高度な感性を持つ人間である私達は、生身の人間との会話やスキンシップによる愛情の授受関係がなければ、本当の安心感や満足は得ることができません。

もっと言えば、情報端末を極限まで駆使して平面的な知識を究めても、人生の最終的目的であり最大の宿題である人格の完成は成就できません。

人格の成熟と完成のためには、天が与えた自然万物を愛し、人を心底から愛し、愛されたという実体験が必要不可欠なのです。