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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 181

愛の知恵袋 181local_offer

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

報われる愛、報われない愛

結婚十余年、「なんだか疲れた…」と言う夫婦

40代の男性と話した時のことです。「これって、倦怠期というやつなんでしょうかね」と言って大きなため息をつきます。後で奥さんと話してみると「なんだか疲れますねえ、結婚生活も…」と言います。

結婚して10年余りの夫婦ですが、二人ともなんとなくご不満の様子です。よく聞いてみると、不倫とか暴力や暴言があるわけでもなく、いたって真面目なほうで、「いい夫婦になりたいと思って自分なりに努力してきた」と言います。

夫に聞くと、「妻を喜ばせたいと思って仕事を頑張り、出張した時は土産を買って帰り、誕生日にはプレゼントをしたりしてきたけれど、妻はあまり喜んでくれなかった。この人は愛情に鈍感な人なのかと思ったこともあります」と言う。

妻に聞くと、「パートもやり、家事も一生懸命にやり、子供の面倒もしっかり見てきたつもりですが、ねぎらいの言葉もなく、夫には私の努力が伝わっていないみたいで、がっかりすることが多かった」と言います。

愛情努力が報われないもどかしさ

二人とも、夫婦関係を良くしたいと思って、それなりに愛情努力をしてきたのに、相手にそれが通じていないようで、もどかしさを感じている…という状態でした。

誰でも自分が良かれと思ってしたことを感謝してもらえないとがっかりします。

これが度重なっていくと、「この人は、人の気持ちが分からない人なんだ」という失望感や、「この人は変な人だ」という不信感に陥ることもあります。

実は、これは”愛情努力のすれ違い”という悲劇なのです。

人間は誰でも愛情を表現しようとします。しかし、人はそれぞれ性格が違い育った環境も違うため、「愛情を表現する方法」が違います。また逆に、「何を愛情と感じるか」も人によって違うのです。

自分の考えでは愛情を表現したのに、相手がそれを愛情として感じてくれない場合、不満や誤解が生じやすいのです。従って、幸せな夫婦関係をつくるためには、お互いに、「相手が望む愛情表現方法は何か」を知っておく必要があります。

男性の期待と女性の期待の違い

一緒に暮らしている夫婦でも、男性が期待していることと、女性が期待していることには微妙な違いがあります。ある夫婦セミナーでアンケート調査をしてみたところ、以下のような声が出てきました。

妻が夫に期待していること…… ①思いやり(愛情表現)、②楽しい会話、③経済的安定、④家事への協力、⑤子育てへの協力、⑥感謝と慰労(ねぎらいの言葉)、⑦誠実さ(隠し事をしないこと)

夫が妻に期待していること…… ①女性としての魅力(女らしさ)、②性的充足、③内助の功(家事、家計のやりくり)、④子供のしつけと教育、⑤夫への信頼と称賛、⑥感謝と激励の言葉、⑦両親への孝養

この事を発表すると、夫と妻の双方から「ええ~ッ」という声が上がりました。自分が思っていたことと違う期待を伴侶が持っていたことへの驚きの声でした。

夫婦の愛情表現…12のかたち

せっかく自分のした愛情伝達努力が「報われない努力」にならないためには、「相手が何を期待しているのか」を知ればよいのです。

私の研究では、夫婦間での愛情表現には以下のような12種類の方法があります。

  1. 優しい言葉をかける…(明るく優しい言葉をかけて愛情を伝える)
  2. 手紙やメモで伝える…(手紙・カード・メモなど、文字で愛情を伝える)
  3. 贈り物や土産をあげる…(土産を買ってきたり、贈り物をあげる)
  4. レジャーに連れて行く…(伴侶や子供を旅行や娯楽行事に連れて行く)
  5. クオリティタイムを持つ…(夫婦水入らずのくつろいだ会話の時間を作る)
  6. スキンシップで…(抱擁・キス・腕組・マッサージなどの親密なふれあいで)
  7. 性生活のサービス…(性生活で相手に十分な満足を与えるようにサービスする)
  8. 仕事に励む…(夫が仕事に励む、妻がパートに励むなどして家計を豊かにする)
  9. 具体的奉仕で…(夫が家事を手伝ったり、妻が夫の身辺の世話をしたりする)
  10. 子育てに尽力する…(妻が子育てを熱心にする、夫が子育てに協同する)
  11. 自由にさせてあげる…(相手を束縛せず、したいことを存分にさせてあげる)
  12. 相手の両親に尽くす…(伴侶の実家の両親や親族を大切にしてあげる)

ぜひ一度、夫婦で穏やかな会話の時間を持って、「何をしてくれると嬉しいの?」と聞いてみましょう。それさえ分かったら、相手が期待していることに力を入れればよいのです。そうすれば、愛情努力が「報われる愛情努力」になっていきます。